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第17回乳幼児学校保健研修会報告

記事公開日

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2026年9月6日に、ビジョンセンター浜松町で第17回日本小児科医会乳幼児学校保健研修会がWEBとのハイブリッドで開催されました。今回のテーマは「教育現場を知る〜⼦どもたちの⼼の健康を中⼼に〜」で小児科医以外の講師の先生方からご講演いただきました。現地に20名、WEBで127名が研修会に参加されました。午前に2演題、午後は児童生徒の健康に関わる様々な職種から3演題の講演があり、その後に総合討論を行いました。


挨拶

佐藤好範先生(公益社団法人日本小児科医会会長)

研修会は佐藤好範 日本小児科医会会長の挨拶で始まりました。

第1演題

午前の1題目は文部科学省総合教育政策局健康教育・食育課長の樫原哲哉先生から「教育行政から見た子供の心の健康について」と題して、文部科学省の学校保健行政の現状と今後の方向性についてご講演いただきました。

近年、児童生徒の健康課題は、メンタルヘルス、いじめ、虐待、生活習慣など多様化・複雑化しており、心身の不調を早期に発見し、継続的な支援につなげることが重要とされました。改正自殺対策基本法を踏まえ、学校において心の健康に関する健康診断や保健指導、知識の向上を進める方向性が示されました。また、健康診断は疾病の発見だけでなく、健康相談や保健指導、健康教育につなげる役割も期待されています。今後は、養護教諭、学校医、教育委員会、医療・保健福祉機関等が連携し、学校単位にとどまらない持続可能な学校健診体制を構築することが重要であり、小児科医にも地域連携の中で専門性を発揮することが期待されます。


第2演題

午前の2題目は東京大学名誉教授で現在公立学校共済組合関東中央病院メンタルヘルスセンター長として教員の精神疾患休職の予防に取り組んでおられる佐々木司先生より「子どものメンタルヘルスに対する学校での対応」と題して、子どもの精神疾患の特徴と学校における対応、医療との連携についてご講演いただきました。

精神疾患は決してまれなものではなく、発症年齢も若く、特に思春期以降に増加することが示されました。思春期は心身の変化に加え、友人関係やいじめなどの問題が生じやすく、自傷・自殺につながるリスクにも注意が必要です。また、子どもの精神的な不調は、頭痛、腹痛、睡眠や食欲の変化など身体症状として現れることも多く、周囲がそのサインを見逃さないことが重要です。学校では養護教諭が相談の入り口となることが多く、担任、管理職、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、多職種による支援が求められます。一方、精神科受診には本人や家族に心理的な抵抗がある場合もあり、小児科医が精神科医療への橋渡し役となる可能性が示されました。特に印象に残ったのは、学校と医療がお互いの役割や事情を十分に理解し、継続的に情報共有することの重要性です。また、子どもだけでなく、保護者や教職員を含めたメンタルヘルス・リテラシーの向上も不可欠であると感じました。今後、小児科医として学校との連携をさらに深め、子どもの心身の変化を早期に捉え、適切な支援につなげていきたいと感じました。


第3演題

午後の1題目は、横浜市立大学附属病院精神科の石井美緒先生から「横浜市での⼦どものメンタルヘルスに対する取り組み」と題してGIGA端末を活用した学校における子どものメンタルヘルス支援についてご講演いただきました。

若者は心の不調を自覚しても、周囲に相談したり医療機関を受診したりすることが少なく、早期発見と適切な支援につなげる仕組みが重要です。横浜市では、教育委員会と横浜市立大学が連携し、GIGA端末による「こころチェック」で心の状態を可視化し、その結果を児童精神医学的アセスメントや学校でのケアにつなげる「横浜モデル」を構築しています。また、児童生徒・教員へのメンタルヘルス教育を通じて、心を気にかける文化の醸成を目指しています。一方、データの解釈・管理、回答しない児童生徒への対応、教職員の負担などの課題も示されました。小児科医として、日常診療でも子どもの心身の不調が身体症状として現れることを経験しており、学校での早期の気づきと医療への適切なつなぎは極めて重要と感じました。今後は、学校と医療が情報を共有し、子どもの主体的な気づきを支えながら、必要な支援へ円滑につなげる地域連携の体制をさらに充実させることが重要と思われます。


第4演題

午後の2題目は、いわかね社会福祉士事務所代表の岩金俊充先生から「子どものメンタルヘルスに対するスクールソーシャルワーカー(SSW)の役割・実際について」と題して、学校を基盤とした子ども・家庭への支援についてご講演いただきました。

SSWは、子ども個人の問題だけに着目するのではなく、家庭、学校、地域との関係性を捉え、社会資源との連携や環境調整を通して、困難な状況を好転させる役割を担っています。学級崩壊、うつ状態の教職員、虐待を行うなど関係構築が困難な保護者への支援について、具体例を挙げて問題が生じる背景と支援の過程が紹介されました。また、SSWは不登校、いじめ、虐待、障害、疾病、貧困など幅広い課題に対応し、教員や保護者への相談・情報提供、関係機関との調整などを行うことが示されました。小児科医として、子どもの心身の問題を本人だけの問題として捉えず、家庭や学校を含む環境全体から理解する視点の重要性を改めて認識しました。今後は、学校、医療、福祉がそれぞれの専門性を生かし、子どもの最善の利益を中心に据えた連携を進めることが重要と思われます。


第5演題

午後の3題目は、城東こどもクリニック・こどもサポート「はなまる教室」代表の中村修先生から「今、子どもたちが必要としている支援とは〜個人モデル、社会モデルを超えて、教育モデルへ〜」と題して、現在の学校教育が抱える課題と、これからの子どもへの支援のあり方についてご講演いただきました。

特別支援教育を必要とする子どもや不登校児童生徒が増加する一方、教員不足などにより十分な支援が困難となっている現状が示されました。障害を個人の機能上の問題として捉える「個人モデル」と、社会的障壁に着目する「社会モデル」を踏まえ、子どもの特性と教育環境との相互作用、さらに「育ちの時間軸」を重視する「支援の教育モデル」が提案されました。特に、医学的診断を支援の根拠とするのではなく、子どもが学習や活動に参加しやすいよう教育環境を調整することの重要性が強調されました。小児科医としても、子どもを診断名で固定的に捉えるのではなく、成長発達の経過と生活環境を含めて理解し、教育・福祉と連携して支援する視点が重要であると感じました。今後は、すべての子どもを対象に、必要な時に必要な支援を提供できる学校の体制づくりが求められます。


総合討論

総合討論では、子どものメンタルヘルスの評価と支援、学校と医療の役割、多様な背景を持つ子どもへの支援、そして多職種連携のあり方について幅広く議論されました。心のチェックについては、尺度の点数だけで不調を判断し、直ちに医療につなげるものではなく、教員が日常的に把握している子どもの様子、登校状況、学習面、家庭からの情報などと合わせて多角的に評価し、子ども・保護者との対話や支援につなげるツールとして活用することが重要とされました。また、学校側もチェック結果をもとに授業や学校生活を見直し、子どもが安心して過ごせる環境をつくる視点が求められました。不登校や多様な学びについては、従来の一斉教育だけにとらわれず、子どもに応じた選択肢を広げる必要性も指摘されました。


総評

松下享先生(公益社団法人日本小児科医会副会長)

本研修会では、文部科学省から学校における持続可能な保健管理のあり方や今後の改革について説明があり、続いて子どものメンタルヘルスをめぐる学校現場の課題と医療との関わりが示されました。午後には精神科医、ソーシャルワーカー、子ども支援の実践者から現場のリアルな報告がありました。特に「連携とは専門家への丸投げではなく、各職種が互いに“のりしろ”を広げること」との議論が印象的で、かかりつけ小児科医も専門外とせず、子どもを支える役割を広げていく重要性が強調されました。

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