第22回 内藤壽七郎記念賞を受賞して~受賞者の声

[写真説明]向かって左から伊藤隆一会長,木野稔先生,及川馨先生
受賞のメッセージ~木野 稔
この度、第36回日本小児科医会総会フォーラム in神戸にて、内藤壽七郎記念賞を受賞させていただきました。育児の神様と言われる内藤先生のお名前を冠した賞に、大変恐縮しながらも、誠に光栄に存じております。
私は日本小児科医会では、1999年(平成11年)に広報委員会に入らせていただき、その後、理事、副会長と平成28年まで多くの先生方にお世話になりました。
私は現在、大阪旭こども病院の理事長ですが、大阪総合保育大学大学院の特任教授でもあります。数年前に「子育て世代包括支援センターの史的研究―愛育隣保舘(1938〜1945年)に焦点をあててー」という博士論文を審査することがありました。現在の恩賜財団母子愛育会の前身団体が戦前に行った母子保健・保育活動を詳細に調査した研究ですが、内藤先生も小児科医として指導的な活躍をされていました。論文では、論者が内藤先生に何度もインタビューしています。その内容の一部を紹介しますと、[2003年12月10日付]
問) 先生自御身で、ご自分のお仕事を振り返るとどのように思われますか?まだ、やり遂げられていない課題はありますか?
答) その後、皆さんどんな風になられたかを知りたいんですよ。小さい時申し上げたことがどんな風に展開されていったのかを知りたいんですけどね。そういうシステムがないことが残念ですね。ちょっとした時に、今こういう大学に行ってますとか、どんなことを目指していますとか、葉書を貰うとそれが非常にうれしいんですよね。でも、そうした追跡調査があれば小さい時のことがその後の人生にどう響くのかが判ると思うのですね。
今はDXの時代、当院では14年前に電子カルテを導入しました。まだ、システム化はできていませんが、カルテは患者のもの、外来受診や入院はもちろんのこと、健診や予防接種、病児保育等で経験されたことが、一生涯いつでも振り返ることができれば、内藤先生の課題にお答えすることも夢ではありません。
私は2年前にALSと診断され、呼吸器に繋がりほぼ寝たきり状態ですが、大阪旭こども病院の理事長として、「いつも何がこどもにとって一番大切かを考えて医療を提供する」ことを理念とし、次世代につなぐよう努めています。これから日本は本格的な少子時代に入っていきます。こどもたちのbiopsychosocial well-being を目指して、いよいよ小児医療の本領を発揮すべき時が来ていると思います。どうぞ、日本小児科医会のさらなる発展と皆様方のご活躍、ご健勝をお祈りしています。誠に有難うございました。
内藤壽七郎賞を受賞して~及川馨
この度、内藤壽七郎記念賞を受賞する栄誉を賜り、心より感謝申し上げます。私の小児医療に対する取り組みが評価されたことを大変光栄に思います。
この道を歩む中で支えてくださった同僚や家族、患者の皆様に、心から感謝申し上げます。
内藤壽七郎記念賞をいただくことになり日本小児科医会関係者の方、また地元島根県の小児科医会の諸先生方に改めて感謝申し上げます。
私の53年にわたる小児医療に対する取り組みに評価していただき大変ありがたく思います。
私は昭和47年に京都府立医大を卒業し、母校で研修した後、地元に帰り、島根県立中央病院の小児科に5年半ほど勤務。その後父の後を継いで開業しました。島根県小児科医会の会長を19年ほど勤めました。その間、外来小児科学会の理事、日本小児科学会予防接種・ 感染症委員会委員、日本小児科医会の公衆衛生委員会の業務執行理事もつとめ、ライフワークの予防接種に取り組みました。
私が予防接種に興味を持つきっかけになったのは、先輩のドクターから「この本を読んでみなさい」と渡された一冊の本、前橋市で開業されていた由上修三先生が1992年に出版された「予防接種の考え方」でした。前橋市では、ほぼ100%の接種をしてもなお流行の蔓延を阻止できなかったインフルエンザワクチン。当時のワクチンは流行株との乖離もあり、当時はまだ迅速検査もできない環境での集団接種に疑問を呈したことが「考え方」の出発点でした。1980年代当時と現在とでは多くの相違点がありますが、予防接種の効果と限界を理解したうえで有益なら接種を推進することが必要であると考えるようになりました。
また渡航外来も続けてきました。この間、沖縄から青森県まで多くの地域で予防接種の基本について分かりやすい話をしてきました。公衆衛生委員会は私が参加し始めたころは峯先生が麻疹の全国調査をされていましたが、他に活動があまりできていませんでした。その後理事推薦の強力なメンバーを補充して活動が活発になりました。
コロナの流行が始まってからは、体調を崩すことも多くなり、地元での活動しかできておりません。
今年の3月で80歳になりました。何人かのドクターから、私がまだ頑張って開業を続けていることで自分も頑張らなくてはと話されていました。
少しは壁になって世の役にたっているのかと思うこの頃です。
最近では体調が思わしくなく、気力が衰えてきた気がします。今まで普通にできていたことが、なかなか手につきません。この受賞のお礼を書くのにもなかなか手が進みません。毎日書こう書こうとしても一向にはかどりません。
今後、少しずつ身の回りを整理しつつ、ゆっくりと進んでいこうと考えております。
改めて、このような素晴らしい賞をいただき、心から感謝申し上げます。