日本小児科医会 主催「子どもの心」相談医 カウンセリング実習 大阪 参加報告(レポート)
テーマ「小児科医は不登校児にどのように関わるか?」
2020年2月16日、大阪で開催されましたカウンセリング実習に参加いたしました。私は初めての参加でしたが、このカウンセリング実習は今回もキャンセル待ちが出る大変人気ある講習会です。本日は39名の御参加で大変盛会でした。
●熱気に満ちた会場内の風景
最初に、日本小児科医会「子どもの心」対策委員である野間 大路先生からオリエンテーションとして、参加予定者へ事前に実施されたアンケート結果の報告がありました。不登校児への診療やカウンセリングを実施されている先生は60%近くおられ、半数の先生方が心理士さんに協力して頂いているとの結果でした。その他不登校の診療に役立つ成書や書籍などの紹介、その中でも河合隼雄(著者)の「いじめと不登校」「子どもと悪」から子どもとの面談時における注意点などの紹介もあり大変興味深い始まりでした。
次に、日本小児科医会「子どもの心」相談医認定審査委員でもご活躍の竹中 義人先生から「不登校児へのかかわり方のポイント」とのタイトルで講演頂きました。不登校の定義や歴史、考え方の変遷に始まり不登校の誘因、初診時のポイントや経過、再登校にあたっての注意点などをわかりやすく解説していただきました。また実際の症例提示は大変実際的で参考になりました。参加者へのメッセージとして、治療が確立しているわけではなく・要因も多様であり、ガイドラインにそぐわないこともある・不登校の中には生死にかかわる深刻な事例もあり、迅速な対応が必要なこともある・児や家族を安心させる言葉かけで事態が好転することもある・自分だけで治そうとは思わず、信頼する誰かにつなげる、それがかなわなければ継続支援するとむすばれました。
その後グループに分かれ それぞれのグループで講演から感じたこと、日ごろ疑問に思っていることなどのディスカッションが行われました。治療のスタート、ゴールを何処に持っていくかなど幅広く話し合いました。
●ロールプレイ 声のかけ方
今回注目のロールプレイは2例あり1例目は、中高一貫校で非情に優秀だった子どもが大学入学後に不登校になった女子学生がモデルです。バックグラウンドは過度に介入し子どもの代弁をする母親、関心はあるがうまく自分の意見を表現できない父親、母親の圧力で話せない子どもという設定で、診療でもよく体験するパターンですが、どのように母親を制止するか、母子分離して子どもとだけ話をさせる方法など、実際の声のかけ方などの対応法は大変勉強になりました。また、治療にあたってはゆっくり話を聞ける心理士さんなど協力者が必要であることも痛感いたしました。2例目は異臭のする小学生が学校の勧めで小児科を受診するとの設定で、複雑な家庭背景の中からどのように対応して行政につなげるか、母親をどのように支援するかなど、難しい環境の例を体験いたしました。
●事例を用いたロールプレイ
午後からのグループ・ディスカッションもそれぞれが抱えている症例を話し合ったり、病院勤務、障碍者施設勤務、開業医など立場が違う中での意見交換は新しい気づきもあり、座学だけでは得られない貴重な経験をさせていただきました。また、改めて学校に登校する意味なども考え、多様化する生活様式の中で次世代につながる子どもの成長を見守れるようにしたいと思いました。
●ロールプレイの疑似体験による学習シーン
ひと時コロナウイルスの情報からも離れ、充実した1日でした。今後も実りある講習会が続くことを期待しています。
報告:日本小児科医会 ホームページ委員会 藤谷 宏子