第3回ブラッシュアップセミナー前期を終えて

講演にあたり、まず伊藤隆一日本小児科医会会長が挨拶されました。

伊藤隆一先生(日本小児科医会 会長)
今回は日本小児科医会各委員会からの推薦講演でした。以後講演内容を要約します。
目次
第1講「古くて新しいビタミンDとくる病の話題~ビタミンDの最新の知見~」
時田章史先生(公衆衛生委員会)
100年前に発見されたビタミンDとその欠乏症の歴史、正常な骨構造と病的骨の差異、くる病の診断指針、紫外線量についてのサイトの紹介、小児X連鎖性低リン血症についての講演でした。紫外線不足で容易にビタミンD不足になり、その評価には25(OH)Dの血中濃度の測定が重要です。母乳中のビタミンD濃度は低く、近年はビタミンD不足やビタミンD欠乏性くる病が増加してきているため、世界的に母乳栄養児へのビタミンD投与が勧められています。ビタミンD不足は生理的O脚だけではなく免疫・アレルギー・神経系の疾患、癌など全身の臓器に影響を及ぼします。
第2講「乳幼児と電子映像メディア」」
佐藤和夫先生(子どもとメディア委員会)
子どもの発達と電子映像メディアの影響(特に乳幼児への影響)について講演し、外来や健診の場での啓発資料を紹介された。乳幼児の場合、内容に関わらず“成長と発達に必要な時間を奪う(言語発達、生活リズム、運動不足、眼・視力への影響、愛着形成や自制心の発達、スマホ・タブレット依存等の悪影響)”という視点が重要で、WHOでは「乳幼児が健康に育つためのガイドライン」で、“スクリーンタイム”について“2歳未満は見せないように・2歳以降は1時間まで少ないほど良い”と提言されていることを話されました。子どもの健康を守る立場である小児科医は、この問題にもっと関心を持ち積極的に啓発活動を実践する役割が有ります。
第3講「日本小児科医会ホームページの紹介」
藤谷宏子先生(ホームページ委員会)
日本小児科医会では、こどもに携わるすべての方に、こどもの健やかな成長に関わる有益な情報を提供出来るようにHPを通じて幅広い情報を毎週火曜日に一般サイト、会員サイトともに更新し発信しています。一般向けサイトでは、小児科関連情報について主に医療関係者に対しては行政や関連学会の情報を紹介し、総会フォーラムや各種研修会・イベントなどの日本小児科医会主催共催の開催案内や、日本小児科医会の活動と認定医についても紹介しています。一般の皆様のコーナーでは子育て支援として病気とワクチン、子どもの健康、子どもとアレルギーや子どもの事故などの情報を紹介し、特に本年は出産から1歳ころまでの子育て支援(出産準備、授乳や離乳、沐浴、予防接種、健診など)の分かり易い動画を作成し保護者の皆様へ提供をしています。会員専用サイトでは本年から紙面での提供が終了した日本小児科医会会報・医会ニュースや他団体からの小児科関連学会・研修会の情報を提供している。登録情報はマイページから確認・変更が可能です。
第4講「一般小児科医向け摂食障害診療のポイント」
藤井智香子先生(地域総合小児医療検討委員会推薦)
摂食障害における頻度とその症状や診断としての日本小児心身医学会摂食障害診断ガイドラインについて説明され、治療法としての心理療法プログラムを紹介されました。神経性やせ症を中心とした摂食障害は、小児・思春期の女性に高率に発生し、患者数増加の報告も多く、社会問題としての取り組みも必要です。成長・発達途上の小児ではやせによる身体的影響も大きく、長期間の罹患により、晩期合併症、不登校や社会的損失が生じ、10年間の死亡率5%と生命にかかわる疾患で、早期発見・早期介入が重要です。児童思春期の疾患に対しては各国のガイドラインで家族療法など心理療法プログラムが第一選択治療法として推奨されています。摂食障害は時代と共に大きく変化し、日本心身医学会摂食障害診断ガイドライン第3版では様々な立場の小児科医が摂食障害に取り組めるように、最新の知見を交えて改訂が行われました。
第5講「子ども家庭庁と診療報酬」
大山昇一先生(社会保険委員会)
診療報酬改定の仕組み、増加する医療費に対する地域包括ケアシステム等の厚労省の施策、病院から退院する子どもの類型において医療の進歩に伴い移行期医療における様々な段階の医療提供(在宅医療、乳幼児健診と発達支援など)を必要とする多様化の必要性、小児科医としてのこどもの地域包括ケアシステムへの関わり、こども家庭庁におけるこども政策への日本小児科医会からの提言、令和6年度診療報酬改定での小児に関連した改訂項目(小児診療料、小児かかりつけ診療料、小児特定疾患カウンセリング料等)の見直し、新興感染症等に対応できる地域の医療体制、小児の診療報酬制度の未来について講演された。つなぐ、③子ども食堂や学習支援、物資支援を行う、④自己肯定感を高める接し方をする、⑤生活保護捕捉率を上げるなどして、医療へのアクセスが絶たれないようすることが大切である。
第6講「#8000の背景、現状、課題」
渡部誠一先生(小児救急医療委員会)
日本小児科医会が厚労省委託事業として行った#8000情報収集分析事業報告書を解説されました。今後の課題として都道府県により数社の広域民間事業者で実施体制が異なり、緊急度判定は事業者間に差異・傾向がみられ、年少人口対相談件数は都道府県差異が大きい事、県内医療圏格差の検討、日祝日日勤帯のニーズが多い事、大規模急患センターがある都府県では診療科を決めずに誘導するなどの問題をあげられ、次年度に対応する予定であることを報告されました。
最後に佐藤好範日本小児科医会副会長による総括・閉会挨拶があり閉会となりました。
佐藤好範先生(日本小児科医会副会長)
後期は2025年1月19日(日)です。前期以上の多くの方の参加を期待しています
(関連ブログ)