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2018/08/07

日本小児科医会 主催「第3回 記者懇談会」レポート

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 2018年8月1日 午後6時半から日本プレスセンタービル9階において「第3回 記者懇談会」が開催されました。今回の懇談テーマは「我が国の乳幼児健診の歴史と重要性、そして今後の課題」です。
神川 晃会長からの開催挨拶、成育医療等基本法成立への緊急アピールを力強く読み上げられました。続いて、自見はなこ参議院議員から成育医療等基本法成立に向けた超党派議員連盟設立についての報告、その後の国会での活動経過につき説明がありました。 

神川 晃 会長

 


自見はなこ 参議院議員



 講演1は、引き続いて神川会長からの「母子保健の変遷から見た乳幼児健診」とのタイトルで母子保健水準の変遷につき、妊産婦死亡率と乳児死亡率の向上について1950年代からの変遷を解りやすく説明されました。

出産10万人当たりの妊産婦死亡は、1950年には161.2であったものが母子保健法導入による母子手帳が交付されるようになった1966年には83.9と半減し現在では4.0にまで減少し、また乳児死亡率は1935年106.7から2017年には1.9と大変減少しています。しかし、環境は改善されましたが、母親の半数近くが何かしらの育児不安を抱えており、その解消のためには健診が大変重要であることを強調されました。  
 
 講演2は本会理事で日本小児保健協会会長 秋山千枝子先生から「乳幼児健診の現状と課題」につき講演されました。母子保健法による乳幼児健診の目的、乳幼児健診での課題の変化につき詳しく説明されました。1950年代では、栄養の改善や先天性股関節脱臼などであったものが、1990年代からは、育児不安、児童虐待など、2000年代からは発達障害、子育て・家族支援と変化しています。この中で、育てにくさの支援については、やはり健診でのフォローが重要であることを発達障害児の経過を例にあげわかりやすく訴えられました。また、児童虐待の現状についても提示され、きめ細かい健診でのフォローにより未然に防げることも紹介されました。
現在、虐待の予防には、妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援が必要で、「すべての親子が健康増進を目指し健やかな子育てができることを目指す、新たな時代に突入した 」との佐藤拓代氏の言葉で締めくくられました。

秋山千枝子 理事(左)と稲光 毅 業務執行理事(右)


 講演3は、本会 稲光毅 乳幼児学校保健担当理事から「これからの乳幼児健診のあり方」について,小児保健サービスにおいて健診が果たす役割を提示されながら話されました。末子の年齢別による母親の就労時間や近所付き合いの状況を提示され,現在社会環境の変化や信頼できない情報の氾濫からも、学童以降の小児の心のケアが行き届かなくなっている可能性も高く、その解決にも健診の強化が必要であると主張されました。しかしながら、現在母子保健法により法制化されている乳幼児健診は、1歳6か月児健診と3歳児健診の2回のみであり、公費負担のある3~4か月健診、9~10か月健診をあわせても4回しかなく、14回実施される法的妊婦健診との差には愕然とするものであります。発育発達のチェックだけだはなく心のケア、虐待予防、子育て支援などからの乳幼児の健診の必要性をより強く訴え、充実した健診を実施することにより、安心して出産・子育てができ虐待のない社会を実現するように、再度、成育医療等基本法の成立の重要性を訴えられました。

 会場には、NHK、朝日新聞社、毎日新聞社、産経新聞社などの記者が多く参加され、講演後積極的な質疑応答が行われました。切れ目ない子育て支援とのことですが、実際小児科で受診できるのは何歳までか、成育医療等基本法が成立した時に何が変わるのか?アメリカで健診の受診率が高いのは何故か?虐待の発見における開業医の役割は何か?また、健診に連れて行く立場として予防接種と同時に実施してほしいなど、具体的な質問や意見が多かったです。健診の実際やその意義などついて、今回参加されていた成育医療センターの小枝達也先生から専門家としての解説や回答もあり、記者の皆さまに健診の必要性が伝わったことと思います。日本医師会 釜萢敏先生、平川俊夫先生からも貴重なご意見をいただきました。個人を見る乳幼児の健診の回数が増えて、子どもが大人になり親になるまで、小児科医が切れ目ない子育て支援ができる日が早くに来る事を期待するものです。今回の懇談を通じ小児科医が強調している健診の重要性が、記者の皆さまにもおわかり頂けたと感じました。

小枝 達也 先生(国立成育医療研究センター 副院長)



釜萢 敏 先生(日本医師会 常任理事)

 


記者懇談会の会場風景



(文責)
公益社団法人日本小児科医会
ホームページ委員会
業務執行理事 藤谷 宏子

次回開催予定

●日 時:2018年12月5日(水) 18:30~ 
●会 場:日本プレスセンタービル9階・会見場
●テーマ:AMR対策(仮)