イベント・研修会情報
2018/12/11
●会場の風景
講演1「自傷・自殺する子どもの理解と援助」
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
薬物依存研究部部長/薬物依存治療センター センター長 松本 俊彦先生
先ず「自傷」について、基本的な知識について解説をされ、若者の一割に自傷の経験がある現在身近にいる自傷の経験者をサポートする際の注意点などをご講演いただきました。
自傷は、多くの誤解と偏見に曝されている行動で、原因の大半は怒りや絶望感といった「辛い感情」を和らげる試みで行われており、一般によく言われている「人の気を惹くため」ではありません。ですから自傷の傷を発見した場合の対応として“Respond medically, not emotionally” が重要で決して驚いたり、怒ったり、叱責せず穏やかに冷静に対応することを勧められました。また実際に行ってはいけない言動についても解りやすく解説いただきました。「見える傷」の背景には「見えない傷」があることを十分理解し、大人がなすべきことは「聴くこと」と「質問すること」であり、自傷を繰り返す子ども、自殺リスクの高い子どもをサポートするためには専門家、地域の保健福祉センターなどに相談し助けを求めてほしいと結ばれました。
講演2 認知行動療法とその対応(こころアプリなど)
国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長 堀越 勝先生
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy: CBT)についての成り立ちやその基礎的な考え方の説明から始まりました。1950年から始まり、近年世界中から注目されている新しい心理療法です。軽度うつに対しての有効とされていたCBTは、他の精神疾患にも応用されるようになっているとのことでした。まだ一般的には知られておらず先生がご講演されると認知症予防のご講演と勘違いし多くのお年寄りが来られることが多いとか・・ユーモアを交えてお話し下さいました。「条理問題」「不条理問題」についてCBTでは結果を変えられる問題への行動療法、変えられない問題には認知的な介入、逃避している場合は直面化を図ること等、具体的に示していただきました。問題発生と解決の公式を用い本人自身がその公式に自分自身をあてはめ、自分を知り、問題解決法を見つけていくのを援助する方法で今後日常診療の中でのCBT利用が期待できると結ばれました。
●会場の風景
講演3 思春期の心~不登校を中心に~
東京えびすさまクリニック 山登 敬之先生
「不登校」が話題になり始めたのは1960年第頃からで当時は「学校恐怖症」「登校拒否」などの呼称が使用されていました。この不登校は当初は精神科領域の病気として扱われていましたが、1992年文部省の「登校拒否は殿児童生徒にも起こり得るものである」との言明があり、不登校は病気であるとの見方は過去のものとなりまた。しかし、不登校の子どもたちの辛さは変わらず、世間の理解が良くなったともいえないとのことですが、今回はどのように向き合ったらよいか、どのように対応し、寄り添えばよいかなどを症例を通して具体的にお話しいただきました。ご提示いただいた症例は、特別なものではなくよく遭遇する例だと思いますが何年も根気よく見守るのは大変なことだと実感いたしました。
まとめとしての不登校の子どもへの対応では1.関心を寄せながら、距離を置いて付き合う。
2.子供の症状や行動が持つメッセージを受容する。3.学校に行けない時期を「休養期間」として保障する。4子ども自身の選択が可能になるまで、家族とともに本人の成長を見守る。以上4項目を示されました。
講演4 思春期の保健課題の克服―中高生2万人のアンケート調査から―
久留米大学小児科 永光 信一郎先生
総務省発表の平成30年7月時点による14歳以下の子どもの数は1550万人で総人口の12.2%でピーク時の半数に近く、また生涯未婚率は男性23%、女性14%と30年前の3~5倍となっているのはご存知の通りです。その中、子育て支援や虐待防止は子どもが生まれる前からの取り組みが重要であり、その一環で母親になる前からの母性保健の向上を目指した思春期からの保健教育の重要性を指摘されました。今回は中高生22,000人に日常生活での会話、ネット使用時間、将来の結婚への希望、いじめを含む学校生活など保健課題に対する29項目から実施されたアンケートの考察から下記6項目が見いだされ、詳細に説明していただきました。1.母性保護の向上には、家庭との会話などの親子機能の向上が必要 2.保健教育と学習により母性保健の意識が向上 3.性交体験と母性保健因子の脆弱性との関係 4.母性保護関連因子にける性別・学年・地域格差の存在 5.高い希死念慮率と友人関係・いじめ・親子機能の相関 6.対話の希薄化とネット依存
最後にプライマリーケアのゲートキーパーになる「思春期の親子のかかりつけ医制度をつくりませんか?」と提案されました。
報告:日本小児科医会 HP委員会 藤谷 宏子
●今後の子どもの心対策委員会講演会予定
第18回 思春期の臨床講習会に参加して
2018年11月4日(日) KFCビル KFCホールで 第18回思春期の臨床講習会が開催されました。私達小児科医にとって今後不可欠な分野になるであろう思春期の心の問題を中心に4題の講演で大変有意義な研修会でした。
奥村副会長のご挨拶に始まり、午前は「自傷・自殺する子どもの理解と援助」「認知行動療法とその対応」の2題、午後は「思春期のこころ~不登校事例を中心に~」「思春期の保健課題の克服~中高生2万院のアンケート調査から~」の2題の講演がありました。
●会場の風景
講演1「自傷・自殺する子どもの理解と援助」
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
薬物依存研究部部長/薬物依存治療センター センター長 松本 俊彦先生
先ず「自傷」について、基本的な知識について解説をされ、若者の一割に自傷の経験がある現在身近にいる自傷の経験者をサポートする際の注意点などをご講演いただきました。
自傷は、多くの誤解と偏見に曝されている行動で、原因の大半は怒りや絶望感といった「辛い感情」を和らげる試みで行われており、一般によく言われている「人の気を惹くため」ではありません。ですから自傷の傷を発見した場合の対応として“Respond medically, not emotionally” が重要で決して驚いたり、怒ったり、叱責せず穏やかに冷静に対応することを勧められました。また実際に行ってはいけない言動についても解りやすく解説いただきました。「見える傷」の背景には「見えない傷」があることを十分理解し、大人がなすべきことは「聴くこと」と「質問すること」であり、自傷を繰り返す子ども、自殺リスクの高い子どもをサポートするためには専門家、地域の保健福祉センターなどに相談し助けを求めてほしいと結ばれました。
講演2 認知行動療法とその対応(こころアプリなど)
国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長 堀越 勝先生
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy: CBT)についての成り立ちやその基礎的な考え方の説明から始まりました。1950年から始まり、近年世界中から注目されている新しい心理療法です。軽度うつに対しての有効とされていたCBTは、他の精神疾患にも応用されるようになっているとのことでした。まだ一般的には知られておらず先生がご講演されると認知症予防のご講演と勘違いし多くのお年寄りが来られることが多いとか・・ユーモアを交えてお話し下さいました。「条理問題」「不条理問題」についてCBTでは結果を変えられる問題への行動療法、変えられない問題には認知的な介入、逃避している場合は直面化を図ること等、具体的に示していただきました。問題発生と解決の公式を用い本人自身がその公式に自分自身をあてはめ、自分を知り、問題解決法を見つけていくのを援助する方法で今後日常診療の中でのCBT利用が期待できると結ばれました。
●会場の風景
講演3 思春期の心~不登校を中心に~
東京えびすさまクリニック 山登 敬之先生
「不登校」が話題になり始めたのは1960年第頃からで当時は「学校恐怖症」「登校拒否」などの呼称が使用されていました。この不登校は当初は精神科領域の病気として扱われていましたが、1992年文部省の「登校拒否は殿児童生徒にも起こり得るものである」との言明があり、不登校は病気であるとの見方は過去のものとなりまた。しかし、不登校の子どもたちの辛さは変わらず、世間の理解が良くなったともいえないとのことですが、今回はどのように向き合ったらよいか、どのように対応し、寄り添えばよいかなどを症例を通して具体的にお話しいただきました。ご提示いただいた症例は、特別なものではなくよく遭遇する例だと思いますが何年も根気よく見守るのは大変なことだと実感いたしました。
まとめとしての不登校の子どもへの対応では1.関心を寄せながら、距離を置いて付き合う。
2.子供の症状や行動が持つメッセージを受容する。3.学校に行けない時期を「休養期間」として保障する。4子ども自身の選択が可能になるまで、家族とともに本人の成長を見守る。以上4項目を示されました。
講演4 思春期の保健課題の克服―中高生2万人のアンケート調査から―
久留米大学小児科 永光 信一郎先生
総務省発表の平成30年7月時点による14歳以下の子どもの数は1550万人で総人口の12.2%でピーク時の半数に近く、また生涯未婚率は男性23%、女性14%と30年前の3~5倍となっているのはご存知の通りです。その中、子育て支援や虐待防止は子どもが生まれる前からの取り組みが重要であり、その一環で母親になる前からの母性保健の向上を目指した思春期からの保健教育の重要性を指摘されました。今回は中高生22,000人に日常生活での会話、ネット使用時間、将来の結婚への希望、いじめを含む学校生活など保健課題に対する29項目から実施されたアンケートの考察から下記6項目が見いだされ、詳細に説明していただきました。1.母性保護の向上には、家庭との会話などの親子機能の向上が必要 2.保健教育と学習により母性保健の意識が向上 3.性交体験と母性保健因子の脆弱性との関係 4.母性保護関連因子にける性別・学年・地域格差の存在 5.高い希死念慮率と友人関係・いじめ・親子機能の相関 6.対話の希薄化とネット依存
最後にプライマリーケアのゲートキーパーになる「思春期の親子のかかりつけ医制度をつくりませんか?」と提案されました。
報告:日本小児科医会 HP委員会 藤谷 宏子
●今後の子どもの心対策委員会講演会予定