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2018/12/11

日本小児科医会 主催「第4回 記者懇談会」レポート

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2018年12月5日 午後6時半から日本プレスセンタービル9階において「第4回 記者懇談会」が開催されました。
今回の懇談テーマは「AMR対策」です。
神川 晃会長からの開催挨拶、成育基本法が衆議院厚労委員会で可決されたとの嬉しいお知らせの御報告がありました。


講演1「薬剤耐性(AMR)対策の現状」[スライドを見る]

国立国際医療研究センター病院
AMR臨床リファレンスセンター 
情報・教育支援室長
具 芳明 先生


講演要旨

 0世紀後半以降の医療の発展は抗菌薬なくてはなし得なかった。抗菌薬は細菌感染症を治療可能としたのはもちろん、外科治療や抗がん化学療法、臓器移植など様々な医療を支えてきた。しかし、薬剤耐性菌すなわち様々な機序で抗菌薬の作用をかいくぐる細菌がしだいに増加し、感染症の治療や予防に深刻な影響を及ぼしつつある。無策で放置していれば人々の健康に重大なダメージを与えかねない。
 薬剤耐性菌増加の背景には抗菌薬使用の増加、不十分な感染防止対策、畜水産業での抗菌薬使用、薬剤耐性菌による環境の汚染、新規抗菌薬開発の滞りなどさまざまな要因が考えられている。そのため、国際的には世界保健機関(WHO)のグローバルアクションプラン(2015年)、国内では日本政府の薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016年)に基づいて取り組みが進められている。

本講演では、国内外のAMRの現状や取り組みについて最新の動向を踏まえて解説されました。


講演2「小児における感染症と抗菌薬処方の現状や適性使用にむけた取り組み」[スライドを見る]

国立成育医療研究センター感染症科
診療部長・感染制御部統括部長
宮入 烈 先生

講演要旨

 小児は感染症にかかりやすく、医療機関への受診や抗菌薬の処方機会も多い。多くの感染症は自然軽快するいわゆる「風邪」であるが、過去には上気道炎を患う小児の6割以上、急性下痢症と診断された患者の2-3割に抗菌薬処方がなされていると報告され、多くは不要な処方であると推察されている。2017年6月には厚生労働省から「抗微生物薬適正使用の手引き」が発行され、適切な抗菌薬処方についての基準が示された。2018年4月からは診療報酬改定により上気道炎等に対して抗菌薬処方をせず説明を行うことで「小児抗菌薬適正使用加算」を算定出来るようになった。
 小児における風邪を抗菌薬が必要となる細菌感染症と区別する事は必ずしも容易ではない。また、風邪が中耳炎や肺炎に移行する場合もある。抗菌薬の適正使用を進めていく上では、軽微な徴候から細菌感染症を見逃さない高い診察能力が求められる。小児を診る他の診療科の協力と連携もますます重要となる。また、症状に応じた再受診の目安を患者家族に丁寧に伝え、ご理解いただく事も重要で、啓発や社会全体としての取り組みが求められている。
続いて東京都立小児総合医療センター 堀越 裕穂 先生から臨床現場で絵の現状についての指定発言がありました。


●第4回 記者懇談会 会場内の様子
 


 2題の講演と指定発言の後に日本小児科医会公衆衛生委員会 及川 馨 先生から「小児科外来における抗菌薬の適正使用」に対する日本小児科医会声明が読み上げられ、峯眞人先生から1歳前の子どもたちと感染症の動向につき補足説明がありました。
 その後、日経新聞 読売新聞、産経新聞、食生活ジャーナリストの会などの出席された記者から、外国での抗菌薬対策の現状や日本との比較について、希望しない抗菌薬が処方された時の対応、不要な抗菌薬の保険適用についてなどの数多くの質問があり積極的な意見交換が行われました。
 意見交換終了後、参議院議員 自見 はなこ 先生が当日衆議院厚労委員会で成育基本法が可決されたことが報告されました。翌日から衆議院、参議院厚労委員会、参議院本会議で審議され成立される見込みにつき説明がありました。成育基本法成立により、次世代を担う子どもが妊娠期からの切れ目ない子育て支援を受けながら心身が健やかに成育されることを期待します。

講師の先生のご厚意により当日の講演スライドを提供していただきました。




●参議院議員 自見はなこ先生(右から2番目)・三ッ林裕巳先生(右から4番目)と日本小児科医会 役員
 
(文責)
公益社団法人日本小児科医会
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業務執行理事 藤谷 宏子