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2018/09/25

第8回 日本小児科医会 乳幼児学校保健研修会を終えて。

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平成30年9月16日(日)、三井住友銀行東館ライジング・スクエア SMBCホールにおいて、第8回 乳幼児学校保健研修会を開催しました。私たち小児科医は、診療や健診の中でご家族から離乳食や栄養の相談を受ける機会がしばしばあります。自身の知識・経験の中からアドバイスをしますが、一歩下がって正しい情報は何か、新しい情報は何かと振り返ると、自信がない領域の1つではないでしょうか。医師向けにまとまって食に関する講演を聴く機会はなかなかないことから、今回は「乳幼児の食について考える」をテーマとし5名の先生にご講演をお願いしました。
 

会場の風景
 
●午前の部
神川会長のご挨拶に始まり、午前中は基礎的・総論的な内容を中心とした2つの講演がありました。

1.乳幼児の栄養 ~ビタミン・微量ミネラルを含めた基本的知識と最近の問題~

帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養科 児玉 浩子 先生
乳児の栄養について、最近の傾向、母乳栄養の利点と留意点(鉄欠乏性貧血、くる病、亜鉛欠乏による難治性皮膚炎等)、特殊ミルク・治療用ミルクの問題点(ビタミンや微量元素の不含有)、幼児の栄養について、基礎的知識と問題点、離乳と食物アレルギーの関係について最新の食物アレルギー診療指針に基づいてご講演されました。小児科医であり栄養の専門家の立場から、母乳育児支援に小児科医の参加が少ないことを指摘されました。


1.乳幼児の栄養/児玉 浩子 先生
 

2.離乳食の進め方 ~保護者への支援も含めて~
相模女子大学 栄養科学部 健康栄養学科 堤 ちはる 先生
乳幼児にとって食生活は体のみならず心の健全な発達に重要であり、そのためには適切な食事を好ましい(人的・物的)環境のもとで提供することが重要であること、乳幼児期の「食」の支援で配慮すべき点として、離乳を5、6か月に開始することの意味、多くの保護者が子どもの食事について心配を抱えており、それが子育てそのものへの困難感につながっていること、今の母親にとって食の優先度は低く親の現実に寄り添った支援が望まれること、経済的な理由から偏った食事になってしまうことなどを述べられました。また、現実的に母親ができそうな離乳食作りの実際もユーモアたっぷりに御教示いただきました。子育て支援の場においては、食を通して当たり前を守り、具体例を示しながら当たり前の基準を伝えることが重要であることを指摘されました。


2.離乳食の進め方/堤 ちはる 先生
 
 

午後の部は3名の先生に具体的な指導につながるご講演をいただきました。

3. 離乳食の考え方とその支援 ~小児科医が出来ること~

さかいたけお 赤ちゃんこどもクリニック 堺 武男 先生
離乳食を作るのは母親と家族であることを前提に、強制や指導をできるだけ避けて、相談相手という立場で支援を行っている。特に初産児では母親は離乳食について緊張しているので、母親がリラックスをしてそれまでの母子関係を離乳食を巡ることで壊れることがないよう支援することが重要。子ども、そして家庭も様々であり、それぞれに合わせて画一的な指導にならないようにし、離乳食の開始時期、回数の増やし方などは方向性を示すが、味付けや量についてはそれぞれであり、あまりこだわらない。母乳栄養では8?9か月頃の鉄欠乏に注意が必要。食育は離乳食から始まり、何よりも楽しく食べることが大切であることを述べられました。


3. 離乳食の考え方とその支援/堺 武男 先生


4.離乳食を食べない子への指導

東洋大学 ライフデザイン学部 太田百合子 先生
離乳食は栄養補給とともに消化器官の発達を促し、咀嚼の練習になり、好奇心を育む役割がある。離乳食から「食事は楽しく」を伝えることが大切。手づかみ食べは食への意欲を引き出すことにつながる。様々な背景があり、アンケートでは多くの保護者が離乳食について困ったことがあると答えており、月齢ごとに保護者の困りごとを挙げ、その対応について細かく解説いただきました。水を生かす和食を見直し、日本の習慣を振り返ることで離乳食のヒントが得られること、児童福祉法で保育所等地域における子育て支援(多職種の連携)が謳われていることを示され、ベビーフードや冷凍食品の活用を含め離乳食に関する母親のストレスを減らし、親子で楽しく食べる環境を整えることの重要性を述べられました。


4.離乳食を食べない子への指導/太田百合子 先生


5.口腔機能の発達と発達不全

昭和大学 歯学部 スペシャルニーズ口腔医学講座 口腔衛生学部門 弘中 祥司 先生
歯科の視点から口腔の形態的発達、機能的発達と食の関係について画像・動画を交えてわかりやすく解説いただきました。食べる機能の発達に伴って離乳食が進こと、発達段階に見合った食材、食具を準備することを述べられました。また、乳幼児経管依存症候群の問題について示されました。


5.口腔機能の発達と発達不全/弘中 祥司 先生


講演に引き続き、5名の演者に壇上に上がっていただき総合討論が行われました。フロアの先生方から講演内容について、また今困っているケースについて質問があり演者の先生に丁寧にわかりやすくお答えいただきました。なお、会場からの亜鉛欠乏に関連した質問に対する資料として研修会終了後に児玉浩子先生から、日本臨床栄養学会がまとめた亜鉛欠乏症の診療指針2018をご紹介いただきました。日本臨床栄養学会のホームページ TOP>亜鉛欠乏症の診療指針2018
http://www.jscn.gr.jp/pdf/aen20180918.pdf)からご覧いただけますのでご参照ください。乳幼児の食の相談は育児支援の大きな柱の1つでること、離乳食は子どもにとっても保護者にとっても楽しいものであることが重要であるというのが演者の先生共通のメッセージだったのではないかと思います。281名のご参加をいただき最後まで熱心にご討議いただき盛会のうちに研修会を終了することができました。演者の先生方、ご参加いただきました皆様にこころよりお礼申し上げます。
 



●集合写真

前列左から:堤 ちはる先生、堺 武男先生、児玉 浩子先生、神川会長、武知副会長、太田 百合子先生、弘中 祥司先生
後列左から:川上委員、河村委員、伊藤委員、新津委員、松下委員、稲光業務執行理事、増田委員、小池委員、岩田委員
 

次回、第9回 乳幼児学校保健研修会は2019年9月15日(日)に同じ会場で学校保健を取り上げ、
「健康教育にかかわろう」をテーマに開催いたします。
詳細が決まりましたらご案内申し上げます。