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2018/12/04

第5回 地域総合小児医療認定医のための指導者研修会 報告

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 平成30年11月25日、全国町村会館にて、第5回 地域総合小児医療認定医のための指導者研修会を開催しました。ワークショップを取り入れた研修会のため、定員を120名とさせていただきました。当日は、ご都合の悪くなられた先生がいらして、結局参加者は100名でした。
伊藤隆一副会長の挨拶に引き続き、午前の講演が始まりました。

●会場の風景

 講演1は、どうすればこどもの風邪に抗菌薬を出さずにすむことを教え広めるかというテーマについて、兵庫県立こども病院感染症科 笠井正志 先生より「抗微生物薬適正使用、こどもたちの今と未来のために地域を変える」という演題でご講演いただきました。多くの小児科医はこの命題は十分承知していることとしながら、実際には様々なデータを解析しても、まだ抗微生物薬の使用量、使用頻度は多く、地域格差、医療機関格差など2極化が目立つようです。実際には、不適正処方より不必要処方がはるかに多いことが問題であることを強調され、自らの処方を顧みながら適正処方へ向かうための、いくつかの地域での取り組みについて紹介されました。最後に適正処方と抗微生物薬を投与しないということとは違うこと、不適正な不処方も大きな問題で、単に抗微生物薬を処方しないことを美徳とする風潮は間違っていると指摘され、若い小児科医に感染症の怖さと臨床診断に基づく抗微生物薬の適正処方を伝えていかなければならないと結ばれました。

●講演1/笠井正志先生

 続いて講演2では、日本小児科学会生涯教育専門医育成委員会で小児科専攻医の研修手帳の編纂に深くかかわっていらっしゃる金沢医科大学 医学教育講座 高村昭輝 先生に「臨床現場での評価の実際」についてご講演をいただきました。医師として成長するためのカリキュラムにおける評価は、到達目標の設定、それを達成するための方略(方法と戦略)、そして達しているかどうかの判断が必要となります。その評価には、総括的評価と形勢的評価があります。専門医になるための最後の試験は前者であるが、実際の研修においては後者を繰り返して到達目標に近づくことが重要となります。小児科専門医としての資質・能力(アウトカム)はマイルストーンで評価し、疾患や症候の理解は、実際の外来観察を診て評価するmini-CEX、現場で実際の患者への手技を評価するDOPS、同僚や、他の医療職、管理者、患者、学生などから評価を受ける360フィードバックなどの現場基盤評価(Workplace-based Assessmennt WpBA)を受けます。

●講演2/高村昭輝先生

 昼食をはさんで、午後は、日本子ども虐待学会でご活躍の国保旭中央病院小児科 仙田昌義 先生から、医療機関向け虐待対応プログラムBEAMSステージ1の講義を伺いました。児童虐待の定義から始まり、虐待を疑い、全身診察から虐待の可能性を考察し、虐待の鑑別をし、状況によっては他機関(院内虐待対応組織CPTのある病院、児童相談所、市町村の窓口や保健センターなど)につなげる方法を考えることを仙田先生のご経験された事例を提示しながら、テンポの良い臨場感あふれるお話しを伺いました。日常診療の中で、虐待を見逃さないことが重要と改めて感じました。その後3人グループでのロールプレイに入りました。身体虐待が疑われる6歳男児を連れた母子の診察の場面で、まず母子を分離し、母と子それぞれから話を聞くという設定で、医師、看護師、母、子それぞれの役を演じました。「母子分離」「子どもと母を別々に問診する」「6歳の子どもとラポールを形成し、オープンクエスチョンで虐待の真実に迫る」など、普段の診察では経験のない状況で、戸惑いを感じた方も多くいらしたようです。親の前で、本当のことを話せる子どもはいないのが当然で、虐待を診断するためには必要なことだと感じました。最後に坂井聖二 先生の「虐待の存在を全く考慮に入れない時、また虐待の存在を疑いながら様々な理由をつけて、その問題に対処しない時、それは我々の行うネグレクトである。」の言葉で締めくくられました。

●講演3/仙田昌義先生

 朝10時から午後4時半までの長丁場でしたが、アンケートからは、「わかりやすい講義で、ロールプレイ、ディスカッションも参考になった。」「明日からの診療にも役に立つ。」「地元に持ち帰って、抗菌薬の適正使用を考えていきたい。」「若い人の考え方、教え方が分かった」などの感想をいただき、おおむね好評な研修会だったと思いました。一方「ロールプレイは苦手だ。」「時間が長かった。」などのご意見もあり、今後の指導者研修会に反映させていきたいと思います。

●3人グループでのロールプレイ


●会場の風景

 地域総合小児医療認定医も、2019年度から本制度に移行し、暫定制度で認定させていただいた先生方も初回の更新が近づいてきました。更新までの5年間に1度以上の指導者研修会を受講していただいた方には、指導者となる権利が生まれます。これからも年2回指導者研修会を企画し開催していく予定です。認定医の皆様には是非受講していただき、次世代の地域総合小児医療認定医の育成のためにお力をお借りしたいと考えております。また、その指導者が、地域においてもコアとなり、リーダーとなり、これからの地域小児医療を担っていっていただけることを祈念しております。

【報 告】
日本小児科医会 業務担当理事
地域総合小児医療検討委員会担当
佐藤 好範