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2019/11/12

第19回 思春期の臨床講習会に参加して

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第19回 思春期の臨床講習会が2019年11月10日(日) KFCホールにて開催されました。
この講習会は、主に思春期に起こる問題についての講習会です。
神川 晃 日本小児科医会会長の挨拶に続き、下記プログラムで盛会に開催されました。

講演1「小児・思春期の過敏性腸症候群 ~繰り返す腹痛の訴えへの対応~」  
医療法人たけなかキッズクリニック 竹中義人先生

 講演1は、腹痛についてその種類や捉え方、考え方について、日本古来から言われている腹の虫の居所が悪い、腹の虫がおさまらない等の「腹の虫」の表現や、腹を決める、腹をくくる、腹を割る、腹を抱えるなど、腹にまつわる古くからの言葉等の紹介から始まりました。過敏性腸炎を中心にローマ診断基準の変遷を通じてその症状や分類、診断、腸脳相関についてHPAaxis (hypothalamic- pituitary-adrenal- axis)やMicrobiota-gut-brain-axisの異常などそのメカニズムについての新知見などを紹介されながら説明されました。また外来での腹痛について問診方法や検査の種類、食事療法や認知行動療法など明日からの診療に役立つ情報満載でした。


講演2「自閉症スペクトラム症 ~思春期の課題とその支援~」
白百合女子大学 宮本 信也先生

 講演2は、思春期の自閉スペクトラムについての問題を中心に講演されました。低年齢ではあまり気にならなかった事柄も、思春期になり表面化してくる特性への対応について具体的に示していただきました。特にASD児への物事の説明の仕方、言葉かけの配慮、相づちをうって同意した後での常識を示す指導法など大変参考になりました。またASDのある児は思春期になると自分の症状について自覚してくるため、病名について、いつ誰が何を本人に伝えるかが大変重要であること、本人の特性、症状については保護者が伝えても、診断名は必ず医師が伝えること、診断名を伝えるのは「心理教育」であり「告知」ではないことを強調されました。


講演3「『10代の性』の現状について ~婦人科臨床の現場から~」
西口クリニック婦人科 野口 まゆみ先生

 講演3は、女性の生理的・身体的ライフステージの中で10代の性の特徴のご講演でした。ライフステージの中で月経異常やトラブル、予期しない妊娠(望まない)、中絶、虐待など様々な問題の出現について現状の状況を説明されました。また緊急避妊薬について
その使用法や、さらにOC/LEPについて世界と日本の使用料の違いなども明示されました。最近の感染症についても触れられクラミジア、梅毒の急上昇には強調されその対応や治療についても言及されました。最後に日本産婦人科医会 女性保健部会からの「学校医と教諭のための思春期相談マニュアル」、日本家族計画協会の冊子「思春期男女の悩みにそれぞれ答えます」を紹介していただきました。


講演4「不登校・引きこもり脱出の天国と地獄」
学校法人さくら国際高校学園長 荒井 裕司先生
  
 講演4は、最近注目されている不登校・引きこもりについて、ご自身の家庭訪問での経験談を中心に、復帰された数多くの具体例を紹介されながらの講演でした。日本全国から相談されて、独特の方法で子どもの心を開き親も子も成長する例、ラオスでの学校建設活動の紹介など多岐にわたる取り組みは驚異でした。


 思春期の問題は外来でもなかなか扱いにくいものですが、今回のご講演を参考に
今後の診療に役立てていきたいと思います。


●会場の風景

約190人ご参加で大変盛会にて終了いたしました。

報告:日本小児科医会 HP委員会  藤谷 宏子