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イベント・研修会情報
2024/03/14

第2回ブラッシュアップセミナー後期を終えて

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第2回ブラッシュアップセミナー後期は令和6年1月28日(日)に開催されました。開催方法はウェブ開催のみで、事前登録者数268名と前期に比し77名の増加でした(当日参加者:211名)。

会長挨拶

日本小児科医会 会長 的場医院院長 伊藤隆一先生

本研修会は今年度日本小児科医会が主催する最初の研修会です。能登半島の震災でのリエゾンを含む各活動状況を報告し、今後亜急性期~慢性期の心のケアを中心とした医会の役割について述べられた。コロナ禍での婚姻数の減少等の更なる少子化に対する対策や、韓国の小児科医の動向と今後変化する小児医療へ向けての地域小児医療の役割についても言及された。

1)「学校医は楽しんで学校へ行こう!~学校医に求められる様々な役割~」

日本小児科医会 乳幼児学校保健委員会委員 医療法人社団ぽよぽよクリニック院長 田草雄一先生

要旨:学校保健安全法によると、学校医に求められる役割には定期健康診断以外にも「健康相談」「健康教育」「地域貢献」など種々の事項が有る。健康教育においては医療界と教育界の連携強化が必要であり、松江市教育委員会との連携による成長曲線判定委員会や松江市と協働の子どもとメディアに関する協議会等の設立事例を紹介し、また医学生への学校医活動等にも触れた。アンケートによると学校医の3分の2はやりがいがあると回答したが、やりがいが無い理由として報酬が少ない、学校医業務の増加、健診の意義が不明などが挙げられ、現状の解決策としては報酬の増加と学校医と学校側双方がよりコミュニケーションの機会を増やす事が大事である。

2)「ゲーム障害・ネット依存症について」

blog.image0128_2.jpg日本小児科医会 子どもとメディア委員会業務執行理事 吉村小児科院長 内海裕美先生

要旨:日本小児科医会では2003年から子どもとメディアの問題に警鐘を鳴らし、WHOでは2019年に「ゲーム障害」を新たな疾患として国際分類に加えた。昨今のスマホ社会やオンラインゲームなどでネット依存が顕著となり、睡眠障害、身体的健康障害、不登校、メンタルへの支障、家庭内暴力、親子関係の破綻、現実逃避など様々な社会問題が起きている。予防対策としてスマホ開始年齢を遅らせる、親子でルールの作成、予防教育、現実生活の充実などであり、治療としては認知行動療法、キャンプ治療がある。GIGAスクール構想により小中学校でもメディアリテラシーや使用への啓発、弊害への知識普及が必要である。推薦図書としてはアンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」など多数。

3)「地域総合小児医療認定制度について」

日本小児科医会 地域総合小児医療検討委員会委員長 医療法人社団よいこの小児科院長 佐藤勇先生

要旨:日本小児科医会地域総合小児医療認定医の現状と地域小児医療構築のための認定医の必要性について解説

4)「Pediatric Travelers ―海外渡航する子どもたちのための医療―」

blog.image0128_4.jpg日本小児科医会 国際委員会委員長 グローバルヘルスケアクリニック院長 水野泰孝先生

要旨:PediatricTravelersが受診した時の基礎知識として、渡航外来における主な業務はトラベラーズワクチンの相談と接種、マラリアなどの予防薬投与、留学や赴任前の英文診断書作成、帰国後診療とそれに伴う感染症検査などがある。トラベラーズワクチンでは必須ワクチン(黄熱病など)、日本での定期接種ワクチン、推奨ワクチン(狂犬病、A型肝炎など)に分類され、4W1H(感染症の種類、感染経路、流行地域、流行時期、頻度)に留意してワクチン接種を決定する。留学に際しては英文診断書の作成も必要で、北米留学に当たってはワクチンの条件が厳しく注意しなければならない。日本小児科医会の国際委員会ではHPで上記の内容を掲載しているので活用して貰いたい。同時に海外在住の方のオンライン医療相談も受け付けている。海外渡航後患者の疾病構造は一般的な感染症が多くそれから鑑別診断を進めて行く。インバウンド感染症の感染症対策としては先ず標準感染症予防策を講じその後に感染経路別予防策を講じる。

5)「コロナ時代の子ども感染症」

blog.image0128_5.jpg長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・小児科学主任教授 森内浩幸先生

要旨:COVID-19感染症に対する予防策で様々な感染症の疫学像が変わった。感染症の重症度は宿主側の免疫が大きく影響し、オミクロン株では病原性は減少せず致死率が減少しているのは集団免疫、治療法の進歩、医療体制の強化によるもので、現在では季節性インフルエンザに近づいた。子どもは元々感染症の罹患が多く交差免疫で軽症例が多い。学校閉鎖ではコロナの流行は抑えられずむしろ教育危機や経済損失の方が大きかった。コロナ後は子どものうつ症状が増加、自殺の増加、心身の健康が低下傾向にあり、子どもに関してはCOVID-19関連健康被害の方が問題である。三密を避ける対策で飛沫感染・空気感染の感染症は減少した。しかしコロナ前に比しコロナ後は子どもの免疫が減少しているので、RSウイルス感染症は超コモンな病気となり流行時期の予測は困難となってきたし、2歳未満でのRSウイルスを含む各種感染症の罹患は成人後の呼吸器疾患のリスクが増加するので、生後1~2年は保護者とのコミュニケーションを、その後は集団保育などで獲得免疫を得る方が抵抗力を持つようになる。

総括

日本小児科医会 副会長 さとう小児科医院理事長 佐藤好範先生

地域総合小児医療認定医制度が来年で制定10年目を迎え、地域の小児医療が変化してきていることを踏まえると、保健・医療・福祉・地域環境を網羅して子どもたちをbiopsychosocialに健康な成長をサポートして行かなければならない。この観点でブラッシュアップセミナーでは若い先生方にとって有益と思われ、医会もコミュニティぺデイアトリクスを実践しているので、第3回のブラッシュアップセミナーにもぜひ参加頂きたい。


第3回ブラッシュアップセミナー前期は令和6年11月24日(日)、後期は令和7年1月19日(日)開催予定です。

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