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イベント・研修会情報
2025/02/13

第3回ブラッシュアップセミナー後期報告

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第3回ブラッシュアップセミナーがオンラインで令和7年1月19日に開催されました。登録者数は260名で参加者数は207名でした。
伊藤会長挨拶のあと午前3題、午後3題の講演がありました。

各演題はすべて日本小児科医会委員会からの発表です。以下簡単に各講演内容をまとめました。



「子どもの心の発達について」:内海裕美先生(子どもとメディア委員会)

子どもの心は、身体の成長、家族をはじめとする人とのかかわり、集団生活、社会とのかかわり、文化の影響を受けながら発達していきます。エリクソンは、人間の生涯を8つの段階に分け、各段階で「危機」が発生し、その「危機」を克服できれば健康的に生きられ、できなければ挫折を感じたり希望を失ったりしてしまうという心理社会的発達理論を提唱しています。この理論をもとに乳児期、乳児期前半、乳児期後半、学童期、思春期・青年期における定められた主題と危機について解説されました。そしてまとめとして山口県の教育者が提唱したと言われる子育ての四訓「乳児は肌を離すな」「幼児は手を離すな」「学童は目を離すな」「思春期は心を離すな」を紹介されました。最後に子どもの心の発達を理解するのに役立つ絵本も紹介されました。


「小児科医が精神科で出会った、かつての子ども」:阪下和美先生(地域総合小児医療検討委員会)

小児科医は診察室で多様な背景・病態の子どもたちに出会い、傷病の治療や環境調整を行っています。不適切な養育環境、発達地帯、発達障害、思春期の精神的不調、不登校などで小児科医を訪れた子どもたちがその後どうなっていったのかを、精神科医となり関わっているかつてのこどもたちを紹介し解説されました。そして事例紹介を通じて子どもたちをより豊かな成人期に導くために小児科医ができることについて述べられました。


「私たちにできる国際避難民医療支援への取り組み」:久保田恵巳先生(国際委員会)

日本では令和5年3月の時点で、ロシアのウクライナ侵攻により発生した避難民2700人超の受け入れをしています。しかしながら入国以前にすでに問題を抱えている避難民も多く、いまの日本は彼らの健康状態を保つための環境が整っているとはいえない状況です。在日外国人に対する医療の課題として、海外で子育てする保護者の不安、言語問題、生活基盤の不安定さ、行政サービスの介入の難しさを揚げ、医療従事者は言語や文化的背景を理解した医療体制の構築を検討することが必要であること、医療現場で遭遇する避難民を通じ地域医療体制の重要性を再認識し、小児科医ができることを改めて考える機会をしたいと講演されました。


「小児医学の自己研鑽、その傾向と対策~知識やスキルを向上させるためのヒント~」:藤岡雅司先生(学術教育委員会)

小児医療に携わる限り最新の知見に基づいた診療を心がけなければなりません。日本小児科医会では地域総合小児医療認定医制度を定めており、小児科専門医であることが必須条件になっています。そこには小児科医の25領域の到達目標が掲げられており、24番目の領域には地域総合小児医療が挙げられています。そこで講演ではフレッシュな若手小児科医に要求されている小児科医のレベルを到達目標をもとにして解説し、到達目標に達するためのツールについても紹介されました。


「会報を日々の診療に生かしてください」:川崎康寛先生(広報委員会)

日本小児科医会では年2回会報を発行しています。そこには総会フォーラムや生涯研修セミナーで講演されたものや原著論文が掲載されています。また全国の都道府県小児科医会報の中で発表された原稿の紹介コーナーもあり、小児科診療や小児保健に資するものも多いことから多くの会員や多くの若手小児科医にとってメリットのあるものになっています。一読することで、多くの小児科医のブラッシュアップの機会となれば幸いですと講演されました。


「これからの小児科医に求められるもの~健診を介した子育て支援~」松下享先生(乳幼児学校保健委員会)

乳幼児期の子どもとその家族の状況を把握し、就学以降は子どもの心の健康度を注視しつつ切れ目なく支援するためには地域小児科医が必要です。日本小児科医会は、健診を介してかかりつけ医が子どもとその家族を出生から思春期前を診るシステムつくりを始めています。当委員会が作成した問診から進める個別健診ガイドブック(~小学生から思春期までのバイオサイコソーシャルアプローチ)を参考して、親子が気軽に立ち寄り日常会話の延長で子育てに関する疑問や相談できる場としての地域小児科診療所が、伴走型の子育て支援を志してほしいと講演されました。


最後に藤田が総括を行い閉会となりました。令和7年度も前後期の2回開催する予定です。ご視聴のほどよろしくお願いいたします。


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