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2021/08/26

現在の新型コロナウイルス感染流行下での学校活動について

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2021年8月26日
公益社団法人 日本小児科学会
公益社団法人 日本小児科医会

PDFアイコン.png共同提言全文

新型コロナウイルス感染症の流行第5波は感染性がより高いデルタ株が主流となっており、成人にも子どもにも陽性者が急増し、特に子どもの増加率が高くなっています1)。現在の状況から、2学期の学校での感染者の増加が強く懸念されます。子どもたちの学校生活の確保は極めて重要ですが、感染爆発段階の地域では、社会活動の強度な制限と同様、学校活動にも安全や感染対策の観点から、これまで以上の活動制限が求められる状況です。


2学期の学校再開について

現時点でこれからの感染状況を正確に予測することは困難ですが、2学期の学校再開については、全国一律の一斉休校を行うのではなく、それぞれの地域の感染状況に合わせて、やむを得ない場合には休校や学級閉鎖や分散登校などを考慮する必要があります。行政には、教育委員会や学校設置者等がそうした判断を行う際の具体的な基準やその期間の適切な目安を提示するとともに、日本学校保健会が運営する「学校等欠席者・感染症情報システム」により地域の発生状況をリアルタイムに把握し、データを関係機関が利用できる環境を整備する役割があると考えます。また、残念ながら感染が生じた場合でも、関係者・患者家族等が誹謗中傷やいじめなどを受けることがない社会にしなくてはなりません。

学校内外での効果的な感染対策について

学校活動を維持することは、子どもの健全な発育のためにも最も重要な優先事項です。学校の現場においては、引き続き効果的な感染対策(例えば不織布マスクの着用や教室の十分な換気)を徹底する必要があると考えます。さらに、子どもの感染対策の観点では文部科学省が所管する学校での対応に加えて、学校での感染対策に準拠した学習塾(経済産業省)や学童保育(厚生労働省)等校外での感染対策の徹底も極めて重要です。また、学校や学習塾、学童保育の教職員等には、子どもの最善の利益のために、積極的なワクチンの接種をご検討ください。

小学生とその養育者への対応

もし休校などの措置がなされたとしても、子どもの行き場所や養育者を確保できるように、十分な配慮と準備が必要です。例えば、休校により子どもの養育のために仕事を休まざるを得ない保護者もいますので、職場等においてそうした方への理解と支援が必要となります。休校は子どもの生活を大きく変え、心身にさまざまな影響を与えうる措置です。きめ細やかな対応をしてこの状況を乗り越える必要があります。

中学校・高等学校の対応について

10代になるとウイルスの感染性が成人に近いことが示されており、中学校・高等学校には、小学校よりも強い感染対策が必要と考えられます。特に高等学校では、リモート教育の積極的な活用が望まれます。また、課外活動でのクラスター発生が報告されており、流行状況を考慮した制限も必要と思われます。

感染症対策物資の確保について

不織布マスクは感染予防に重要な役割を果たします。使用量が多いことより家庭の経済的負担軽減のため子ども用マスクの無償提供を考慮すべきと考えます。また、今後感染拡大に伴い、外来等で使用する新型コロナウイルス抗原迅速検査キットの需要が増すことが予測されますので、国主導で十分量を確保すべきと考えます。

最後に

デルタ株による子どもの陽性者の急増に伴い、非常に頻度が低いとしても重症化する患者や、重症でなくても入院が必要となる患者の増加への対策が極めて重要です。子どもの陽性者が今後もさらに増加した場合には、地域での子どもの入院医療調整に必要な連携体制を強化するとともに、例えば電話やオンライン診療などの自宅療養している小児患者を支援する制度を急ぎ整備して、子どもたちの生命を守ることが必要となります。

参考文献

1)厚生労働省第48回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月18日開催)鈴木基先生提出資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00294.html