第21回日本小児科医会生涯研修セミナーin信州 を終えて: 顛末記、そして滋賀県大津へタスキをつなぐ

第21回日本小児科医会生涯研修セミナーin信州
実行委員長 長野県小児科医会 会長 松岡 高史
2025年10月12日(日)信州松本のホテルブエナビスタにおいて第21回日本小児科医会生涯研修セミナーin信州を開催いたしました。セミナーのテーマはありきたりでしたが、「新しい小児科医をめざそう」にしました。子ども達の心身の健康を守り維持するために、小児科医が時代の流れを感じ取りその要請に応えるべく、意識も診療スタイルも変えていかねばないという思いがあったからです。講師には県内の小児医療を牽引するトップリーダー7名招聘しました。長野県内の約90名を含め全国から約310名(現地とWeb)が参加しでくださいました。私がセミナー前に想像していた新しい小児科医像は、診療や経営の知識、技術の習得に対する前向きな意識やスタイルでしたが、セミナーを終えてみると、将来を見据えること、とくに時代とともに変化する人間の価値観の変化を見落とさない能力を身につけることもとても重要なことを痛感しました。
セミナー開催候補となった時点では開催に耐えうるだけの組織作りと人材確保がスタートでした。全国学会開催経験者やDXに長けた人材で実行委員会を作り、プログラム委員長には最も経験があり、実行力とセンスのある人材を登用しました。そしてセミナー開催が決まってからは、コンベンション会社は使わずに、ホテルの担当事務局と二人三脚で自分達のできることは自分達で、絶対に赤字を出さない、をモットーに信州らしさにこだわって準備を進めました。プログラム作りには時間がかかりましたが、幸い信州には全国に誇れる小児科医が数多くいらっしゃったので、どのように構成するのか悩みました。運営財政を安定するためにランチョンセミナー以外にアフタヌーンセミナーと銘打った新たな共催セミナーを設置し、セミナーの伝統である「文化人枠」講演も伊那食品工業株式会社代表取締役社長の塚越 英弘 様にお願いすることができました。講演料が心配でしたが、何と破格の安さで引き受けて下さいました。一時は文化人講演を諦めかけていた我々にとって、これは本当にありがたく嬉しかったです。プログラムが完成してからは、信州の地を紹介する写真と小児科らしくこどもの写真や影像を会員から集め、手作り感が醸し出されるようなPVを信大小児医学教室のセミプロドクターに作っていただきました。我々がとても気に入っていた北アルプス登山中にカップラーメンを笑顔一杯で食べるこどもの影像が、○○食品からのクレームで没になったのはとても残念でした。
従来の定番であった大きなポスターはやめ、小さなフライヤーだけを作成し配布しました。また、開催概要とプログラムを配したパンフレットは公式ホームページ(HP)や後で発行する講演集と内容がかぶることから中止、そしてその講演集の送料を節約するため事前配送は取りやめ、代わりにHP上で事前公開するに留めました。一方、「お・も・て・な・し」は素晴らしいプログラムだけで十分かとも考えましたが、折角、「三がく都 松本(岳都、楽都、学都)」で開くセミナーですから、お蕎麦だけではないところも知っていただけきたいと考えました。そこで信州大学医学部室内楽団に生演奏をお願いする運びになりましたが、当初は講演を聴きながら10人程度ボランティアでの演奏とばかり想像していたのですが、医学科と保健学科を合わせて100名の団員から50人をセレクトして演奏して下さることになりました。これには吃驚し、彼らの気迫に圧倒されました。急遽全員にアルバイト代をきちんとお支払し、講演も無料で聴いていただくことにしました。この中から1人でも信州セミナーに参加したことで小児科医や小児専門看護師をめざす方が誕生してくだされば本望との思いがありました。そして、もうひとつ今秋に松本駅ビルへ店舗進出する軽井沢のお菓子屋さんがアフタヌーンセミナーで新発売予定のクッキーを特別パッケージで信州セミナーバージョンとして提供して下さることになりました。

いよいよ開催日が近づきますとまさに一丁目一番地である参加者集めを本格化させることになりました。300名を赤字回避ラインに設定し、それを目標に長野県小児科医会の会員、長野県内の小児科医、そして中部地区ブロックの近隣県医会、日本小児科医会と徐々に手を広げ、さらに個別に各県会長やブロック長に何度も参加を呼びかけていただきました。5300名の会員がいながら300名の参加者集めることがこれほどハードルが高いとは思いも寄りませでした。
そして事前参加登録者290名でセミナー当日を迎えることになりました。ラッキーなことに天気にも恵まれましたので国宝松本城とともに岳都松本を感じていただけた参加者もおられたのではないでしょうか。開場前の会場に入ったときに、これは広過ぎるのではないかと心配になりました。そんな中、室内楽団のリハーサルが始まり、「もののけ姫メドレー」で幕が切って落とされると不思議なことに気持ちが落ち着きました。いざ始まればあとは自然に流れていくだろうと気楽な気持ちになりました。ところが、Opening remarkの会長挨拶をロビーにいて忘れるというハプニングからセミナーが始まりました。本当にどうなることかと思いました。その後はミスがあっても自然にそれを取り返していく、時間が心配になってもそのうち時間通りに進んでいくという不思議な進行具合でした。講演間の楽団演奏もメリハリになり、適度の緊張感とリラックス感が混在する不思議な時間の流れでした。会場全体が一体化して、スポーツでいう、「ゾーン」に入ったような雰囲気を感じているとあっという間にclosing remarkとなってしましました。この挨拶は本当に心に残り、信州松本のセミナーに参加して良かったと思っていただけたに違いないと確信しました。
やがて、会場外ホールからお見送りの「情熱大陸」が流れると、参加者が足を留め、去りがたい雰囲気で聞き惚れている様子をみて思わず涙がでそうになりました。きっと、会場では「学」はもちろん「楽」も、そして外では「岳」も楽しんでいただけたのではないでしょうか。
仲間の助けや皆様の応援とご協力があって何とか伝統のタスキをつなぐことができました。会場に足をお運びいただいた202名の参加者の皆様、本当にありがとうございました。 そして、セミナーに関係して下さった方々すべてに心より御礼申し上げます。
- 信州大学医学部室内楽団の演奏プログラム
- オンデマンド配信中(2025年10月15日から11月15日まで)、オンデマンド追加登録受付中。
- セミナーではスタッフが緑色&水玉ネクタイとスカーフを着用しました。チーム信州の一体感を表現できたかと思います。アマゾンで購入しましたが、これが「草間彌生の公式グッズ」かどうかはいまだに謎です。