イベント・研修会情報
2021/11/13
第8回 地域総合小児医療認定医のための指導者研修会 報告
令和3年3月31日までに地域総合小児医療認定医は延べ1207名、誕生しました。取得後5年後の更新をされるまでに指導者研修会に最低1回指導者研修会にご参加していただければ、更新時に『地域総合小児医療認定医指導者』の資格を取得できます。これまでに指導者は230名になりました。指導者には、後進の育成の他、地域小児医療の推進に当たり地域のコアとなっていただくことが期待されています。昨年度は、新型コロナウイルス感染症流行のため、ワークショップ形式での研修会がひらくことできず、皆様には大変ご迷惑をおかけしました。
●日本小児科医会 神川 晃 会長のご挨拶とスライド
今年は、令和3年10月31日(日)13:00~16:30 ZOOMによるオンラインで、第8回地域総合小児医療認定医 指導者研修会を開催することができました。「発達障害診療のネットワークつくり」をテーマに、2名の先生のご講演の後、ブレイクアウトルームの機能を利用してのグループワークを行い、最後に総合討論を行いました。当日の様子をご報告いたします。
神経発達症の子どもを小児科外来で診る機会が増えています。しかし、いまだに多くの小児科医は診断と治療、療育へと総合的に診るには力不足を感じていらっしゃると思います。しかし、患者数の増加に対して専門医が少なく、受診までに数か月、数年を待たなければならない例もあると聞いています。そのような状況で、一般小児科医と専門医との連携、医療と保育園や学校との連携、療育施設の整備、さらには保護者を含めた周囲の理解と環境の整備など、地域で子どもを取り巻く様々な方の連携を基盤とした包括したシステムが必要です。そこで、千葉県で子どもの心の診療ネットワークCHIBA TAIYO Projectを立ち上げた精神科医の佐々木先生、そして、福島県を中心に発達障害診療のネットワークを作られている小児科医の横山先生のご講演ののち、10のグループに分かれて、5つの課題に関してグループワークを行いました。
講師の先生のご講演から、筆者の感じた要点をまとめてみました。
講演1「千葉県子どもの心の診療ネットワーク事業 -CHIBA TAIYO Project-」
千葉大学医学部付属病院 こどものこころ診療部 佐々木 剛 先生
児童青年期精神神経が以来の患者数が増加しているが、児童精神科専門病院は限定され、治療提供の場と治療者の不足が深刻化している。また専門的になりすぎてしまい、小児科医・精神科医から敬遠される傾向にあり、治療者も増えてこない。結果、治療提供の場と者の蛸壺化と治療アクセス問題の悪循環になっている。そこで千葉県では各種関係機関に働きかけて、CHIBA TAIYO Project(Treatment Access Intervention for the YOung)を勧めようとしている。児童精神科専門病院を中心に子どもの心に対応できる病院やクリニックと、発達障害支援機関、療育センター、教育機関、福祉施設、児童相談所、保健所、警察などと情報共有、相談、連携を取り、子どもの心の問題に対応できる病院やクリニック、さらには一般の小児科や精神科クリニックへと拡大したネットワークつくりを始めている。患者やその家族に対する、福祉や支援のほかに介入する必要もあることから、法律の専門家の参加も必要と考えている。さらにこのプロジェクトを進めるために重要なことは、研究・教育のシステムと連携強化のため行政の支援である。行政の管轄や機関の壁を越えた支援の連携の構築も必要で、一般住民を含めた多くの人の理解と協力が必要と考えている。
●講演1/佐々木 剛 先生(千葉大学医学部付属病院 こどものこころ診療部)のスライド
講演2「小児科医における発達障害診療のネットワークつくり」
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター医学部小児科学講座
横山 浩之 教授
マルトリートメント(不適切な扱い)による行動異常(反応性愛着障害、脱抑制型対人交流障害)は発達障害の症状に酷似している。乳児健診でマルトリートメントによる行動異常と発達障害をスクリーニングし、相談機関や子育て教室などで支援し、軽症例は幼稚園、保育園での特別支援、重症例は療育施設で療育へとつなげていくネットワークが有効である。言語発達の遅れへは、かかりつけ医が全般性発達遅延として子育て支援を行うことが重要である。すなわち身体を使った遊びの指導、早寝早起き朝ごはんに代表される生活習慣の取得、基本的な挨拶の取得が小学校までにできているように働きかける。子どもにかかわる様々な職種(保健師、保育士、幼稚園教諭、学校教諭、児童相談所福祉など)は立場が異なると考えていることが大きく異なる。また、地域により乳幼児期、就学前と就学後、学校教育における問題や課題が異なり、各地域の特徴を把握してその地域のネットワークを作っていく必要がある。
●講演2/横山 浩之 教授(福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター医学部小児科学講座)
その後ブレイクアウトルーム機能を使って10のグループに分かれてグループワークを行いました。1課題を2グループずつにお願いし、5つの課題について、問題点・課題と解決への方策について話し合っていただきました。
1)かかりつけ小児科医が、支援が必要なこどもについて、その家族や教育現場から相談を受けたとき
2)発達障害の疑いのある子どもを かかりつけ小児科医から専門医(小児科医発達障害専門医、精神科医)につなげるとき
3)専門医(小児科医発達障害専門医、精神科医)から、地域の小児科医に処方を依頼するとき
4)子どもたちの生活の場である保育園、幼稚園や学校、子どもたちが通う児童発達支援センターや発達支援事業などと、かかりつけ小児科医の連携が必要なとき
5)専門医で診る発達障害児とその家族に対して、かかりつけ小児科医が日常の見守りをおこなうとき
グループワーク終了後、再び全体の会議に戻り、藤田理事の司会で各グループからのまとめを発表していただき、演者の佐々木先生、横山先生からもコメントをいただきました。
●グループワークの課題スライド
本来指導者研修会はワークショップ形式での開催を基本としてきました。グループワークを行うことは受動的に講演を聞くよりも、一緒に考え、いろいろな意見をお聞き、考えるという作業を経て、多くのものが記憶に残り、問題の解決に役立つと考えています。今回、初めてオンラインでの研修会を企画しました。事前の準備など事務局には大変ご負担をおかけしました。おかげさまで、技術的なトラブルはなくスムーズにブレイクアウトルームの導入もスムーズにできたと思います。新しいスタイルの指導者研修会ができ、今後の指導者研修会の参考になるものと思いました。ご参加された皆様のご感想はいかがだったでしょうか。
●日本小児科医会 佐藤 好範 先生(地域総合小児医療検討委員会 担当)
第8回 地域総合小児医療認定医 指導者研修会 報告
公益社団法人日本小児科医会
業務執行理事 佐藤 好範
●日本小児科医会 神川 晃 会長のご挨拶とスライド
今年は、令和3年10月31日(日)13:00~16:30 ZOOMによるオンラインで、第8回地域総合小児医療認定医 指導者研修会を開催することができました。「発達障害診療のネットワークつくり」をテーマに、2名の先生のご講演の後、ブレイクアウトルームの機能を利用してのグループワークを行い、最後に総合討論を行いました。当日の様子をご報告いたします。
神経発達症の子どもを小児科外来で診る機会が増えています。しかし、いまだに多くの小児科医は診断と治療、療育へと総合的に診るには力不足を感じていらっしゃると思います。しかし、患者数の増加に対して専門医が少なく、受診までに数か月、数年を待たなければならない例もあると聞いています。そのような状況で、一般小児科医と専門医との連携、医療と保育園や学校との連携、療育施設の整備、さらには保護者を含めた周囲の理解と環境の整備など、地域で子どもを取り巻く様々な方の連携を基盤とした包括したシステムが必要です。そこで、千葉県で子どもの心の診療ネットワークCHIBA TAIYO Projectを立ち上げた精神科医の佐々木先生、そして、福島県を中心に発達障害診療のネットワークを作られている小児科医の横山先生のご講演ののち、10のグループに分かれて、5つの課題に関してグループワークを行いました。
講師の先生のご講演から、筆者の感じた要点をまとめてみました。
講演1「千葉県子どもの心の診療ネットワーク事業 -CHIBA TAIYO Project-」
千葉大学医学部付属病院 こどものこころ診療部 佐々木 剛 先生
児童青年期精神神経が以来の患者数が増加しているが、児童精神科専門病院は限定され、治療提供の場と治療者の不足が深刻化している。また専門的になりすぎてしまい、小児科医・精神科医から敬遠される傾向にあり、治療者も増えてこない。結果、治療提供の場と者の蛸壺化と治療アクセス問題の悪循環になっている。そこで千葉県では各種関係機関に働きかけて、CHIBA TAIYO Project(Treatment Access Intervention for the YOung)を勧めようとしている。児童精神科専門病院を中心に子どもの心に対応できる病院やクリニックと、発達障害支援機関、療育センター、教育機関、福祉施設、児童相談所、保健所、警察などと情報共有、相談、連携を取り、子どもの心の問題に対応できる病院やクリニック、さらには一般の小児科や精神科クリニックへと拡大したネットワークつくりを始めている。患者やその家族に対する、福祉や支援のほかに介入する必要もあることから、法律の専門家の参加も必要と考えている。さらにこのプロジェクトを進めるために重要なことは、研究・教育のシステムと連携強化のため行政の支援である。行政の管轄や機関の壁を越えた支援の連携の構築も必要で、一般住民を含めた多くの人の理解と協力が必要と考えている。
●講演1/佐々木 剛 先生(千葉大学医学部付属病院 こどものこころ診療部)のスライド
講演2「小児科医における発達障害診療のネットワークつくり」
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター医学部小児科学講座
横山 浩之 教授
マルトリートメント(不適切な扱い)による行動異常(反応性愛着障害、脱抑制型対人交流障害)は発達障害の症状に酷似している。乳児健診でマルトリートメントによる行動異常と発達障害をスクリーニングし、相談機関や子育て教室などで支援し、軽症例は幼稚園、保育園での特別支援、重症例は療育施設で療育へとつなげていくネットワークが有効である。言語発達の遅れへは、かかりつけ医が全般性発達遅延として子育て支援を行うことが重要である。すなわち身体を使った遊びの指導、早寝早起き朝ごはんに代表される生活習慣の取得、基本的な挨拶の取得が小学校までにできているように働きかける。子どもにかかわる様々な職種(保健師、保育士、幼稚園教諭、学校教諭、児童相談所福祉など)は立場が異なると考えていることが大きく異なる。また、地域により乳幼児期、就学前と就学後、学校教育における問題や課題が異なり、各地域の特徴を把握してその地域のネットワークを作っていく必要がある。
●講演2/横山 浩之 教授(福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター医学部小児科学講座)
その後ブレイクアウトルーム機能を使って10のグループに分かれてグループワークを行いました。1課題を2グループずつにお願いし、5つの課題について、問題点・課題と解決への方策について話し合っていただきました。
1)かかりつけ小児科医が、支援が必要なこどもについて、その家族や教育現場から相談を受けたとき
2)発達障害の疑いのある子どもを かかりつけ小児科医から専門医(小児科医発達障害専門医、精神科医)につなげるとき
3)専門医(小児科医発達障害専門医、精神科医)から、地域の小児科医に処方を依頼するとき
4)子どもたちの生活の場である保育園、幼稚園や学校、子どもたちが通う児童発達支援センターや発達支援事業などと、かかりつけ小児科医の連携が必要なとき
5)専門医で診る発達障害児とその家族に対して、かかりつけ小児科医が日常の見守りをおこなうとき
グループワーク終了後、再び全体の会議に戻り、藤田理事の司会で各グループからのまとめを発表していただき、演者の佐々木先生、横山先生からもコメントをいただきました。
●グループワークの課題スライド
本来指導者研修会はワークショップ形式での開催を基本としてきました。グループワークを行うことは受動的に講演を聞くよりも、一緒に考え、いろいろな意見をお聞き、考えるという作業を経て、多くのものが記憶に残り、問題の解決に役立つと考えています。今回、初めてオンラインでの研修会を企画しました。事前の準備など事務局には大変ご負担をおかけしました。おかげさまで、技術的なトラブルはなくスムーズにブレイクアウトルームの導入もスムーズにできたと思います。新しいスタイルの指導者研修会ができ、今後の指導者研修会の参考になるものと思いました。ご参加された皆様のご感想はいかがだったでしょうか。
●日本小児科医会 佐藤 好範 先生(地域総合小児医療検討委員会 担当)
第8回 地域総合小児医療認定医 指導者研修会 報告
公益社団法人日本小児科医会
業務執行理事 佐藤 好範