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2022/12/06

【第9回 地域総合小児医療認定医指導者研修会】報告

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第9回 地域総合小児医療認定指導者研修会 報告

 令和4年4月に「こども家庭庁」が設置されます。日本小児科医会はすでに、「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する方針」にもとづく行動目標を作成していますが、多くの行動目標には地域総合小児医療認定医がその役割を果たすと記載されており、認定医の存在は今後ますます重要です。小児医療の要である認定医指導者は認定医を指導する重要な役割を担っており、日頃より多くの研鑽を積んでおく必要があります。

 第9回 指導者研修会は、令和4年11月27日(日)にJA共済ビルカンファレンスホールで開催されました。参加者は22名でした。
今回の指導者研修会は多職種連携をテーマにしました。午前は養育者との信頼関係つくりのための多職種連携、午後は実際にあった困ったケースに遭遇した時の多職種連携について討論しました。グループワークには当委員会委員も参加しました。
 午前午後とも、講義のあと参加者は6グループに分かれそれぞれのテーマについて1時間討論した後、30分間のプレゼンテーションを行ないました。午前午後ともK-J法によるグループワークとなりました。

~プログラム~

1)伊藤会長 挨拶


2)[講演]1

「子ども虐待予防の養育者支援」公益社団法人母子保健推進会議 佐藤拓代 氏


要約
 小児科医に求められるこども虐待予防のための養育者支援には、①妊娠、出産、子育てにおける不安や悩みに対応する中で問題を把握し、在宅での負担軽減の支援をすること。②「生活で困っていることはない?」の言葉かけで経済状態を把握し、経済的問題を抱えているカップルを支援可能な機関につなぐこと。③DVへの気づきと支援、④予期しない妊娠に気づき支援に結び付けることなどがあげられる。小児科医は誰に対しても支援は必要の認識を持ち、子育て支援サービスなどの情報提供を行うとともに、育児負担の軽減ができる機関につなげなければならない。

3)グループワーク1


討論テーマはつぎのとおりでした。


「テーマ①幼児期前半の子ども」
予防接種によく子どもを連れてくるが、母親は疲れているようだ。口数は少ない。家庭の事情がよくわからず、医師としては心配だがどのように動けばいいだろうか?

「テーマ②幼児期後半の子ども」
生命には重大な影響を及ぼさない慢性疾患があり、外来を受診している。この日は父親が連れてきて、受付の事務職員が子どもを怒鳴りつけていると知らせてくれた。医師としてどうしたらよいだろうか?

グループ1,2,3がテーマ①を、グループ4,5,6がテーマ②を検討しました。
各グループのプレゼンテーションのあと佐藤先生からのコメントをいただきました。
テーマ①では、まず母親をほめることで母親を力づけることから始め、自分の医院で解決できるかどうか検討し、関係機関に繋げることが大切であるとコメントされた。
テーマ②では子どもを怒鳴ることは周囲の人達に悪影響を与えるだけでなく、子どもの脳の発達にとっても問題があることを父親に伝えておくべきである。また父親が連れて
こないときに、家庭における父親の状態を確認しておくべきで、その後必要ならば関係機関との連携を考えることとコメントされました。

4)[講演]2
「多職種連携と小児科医」なばりこどもクリニック 稲持英樹 氏


要約
 名張市で行われている子育て支援としての多職種連携について講演された。地域で連携したい職種として、主任児童員・民生児童員、子育て支援員、ケアマネージャー、訪問看護ステーション、児童養護施設、子育て支援拠点施設、ファミリーサポートセンター、児童家庭センター、子育てサークルなどをあげられ、市内15カ所にある「まちの保健室」について説明された。関係機関・関係者の支えに加え、地域の暖かい見守りと人と人とのつながりでお互いを支え合い、相談・支援体制の醸成をめざす街・名張を紹介された。

5)グループワーク2


討論テーマは次の3つでした。


テーマ①<そろそろ2年生での通級か支援級かの処遇を決めなければならない時期です、どのように考えどこにつなぎましょうか?>
小学1年生 1学期は忘れがちではあったが宿題なんとか提出できていた。2学期からは宿題がなかなか取りかかれず、母親が手伝う事でようやく済ませられる。最近学校が怖いと行けなくなり、母親と登校していたが、担任に無理やり教室に連れて行かれて以降、教室にも入れなくなり、給食も教室で食べられなくなる。特別支援の子ども達がリラックスするための教室ですごしている。
家族歴
父:仕事には行っているが、遅刻がち。給料はちゃんと入れている。子どもとはほとんど接触しようとしない。夕食の帰宅後21時過ぎに一人で食べる。
母:実母と同居中だが、これまで母に褒めてもらった記憶がない。小児科医にADHDを初めて指摘され、これまでの自分に納得がいく。中学時代にいじめを経験。コンサータを内服開始後、他人の顔をようやく覚えられるようになりクラスの役員をしている。
妹(5才):多動傾向、兄の学校への登校しぶりを見て、自分も幼稚園行きたがらない。

テーマ②<あまり関わりたくないケースですがほうっておけない事例です。どこにどうつなげましょうか?>
小学2年生 以前一人で怪我をしてクリニックを受診したが簡単に処置し、帰宅してもらった事がある。どうやら、最近クリニックの近くに引っ越してきたらしい。「隣の公園で子どもが怪我している」と近所の子が通報。行ってみると、この子が自宅から何かを持ち出してきて、上級生にぶつけ怪我をさせたとの事。上級生数人と言い合いになり喧嘩になったらしい。
家族歴
父: 建設業/一度トラックに乗せて受診あり、受診時に事務とトラブル、
母:家出中 5年以上音信不通
姉:13才 多動傾向あったが最近落ち着いている。5年前より家事炊事を担っているが最近表情が暗い。学校でも口数が少なくなっている。

テーマ③<子育て支援、だれをどこにつなげましょうか?>
3歳男児 次の子が生まれて、それまで2人を見ていたが、3歳になり、ようやく保育所に預かってもらえるようになったが、何かとトラブルが多い。噛みつく事もあり。指示が通らない。皆と一緒に行動できない。偏食もあり、せっかく作ったものを食べてくれない。白いものしか食べない。給食はなんとか食べているらしい。他の子は取れているのにこの子はまだオムツが取れない。以前、この子は熱性痙攣も繰り返していたようだ。最近、下の子の夜泣きも始まった。母は睡眠不足気味。下の子の予防接種でクリニックを受診したが、母がとても疲れている様子がうかがえる。
家族歴
母: 最近子どもが可愛くない時があると漏らす。手を挙げたくなることもあり。

グループ1,2がテーマ①、グループ3,4がテーマ②、グループ5,6がテーマ③を検討しました。
講師の稲持先生から三重県名張市に設置されている児童家庭支援センターについての説明がありました。one stopで子どもに関する問題を相談できる施設で、今後多くの地域にも設置が望まれます。児童家庭支援センターがない地域の皆さんならどのような連携を考えますか?

6)2か月健診時に用いる母親アンケート
日本小児科医会 乳幼児健診ワーキンググループ 三平 元 氏


日本小児科医会が作成した初めて小児科を受診した乳児の保護者にむけた「子育て支援のための問診票」について紹介説明された。

まとめ
地域医療認定小児科医としてまた指導者となるための充実した研修会となりました。今後は参加者数にもよりますが、毎年1~2回の開催を考えています。認定医をとられていない皆さんも是非ご参加いただき、地域総合小児医療認定医仲間たちの息吹を感じてください。
地域総合小児医療検討委員会委員全員でお待ちしています。

報告:日本小児科医会 地域総合小児医療検討委員会
   業務執行理事 藤田 位 


●開催においてご尽力いただいた先生方



★2022年11月29日 先行掲載
【第9回 地域総合小児医療認定医指導者研修会】は盛会にて終了いたしました。
終了報告:日本小児科医会 ホームページ委員会
      業務執行理事 藤谷 宏子
https://www.jpa-web.org/blog/tiikisogo/a310