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2022/09/27

新型コロナウイルス感染症罹患者の全数把握見直しに関する日本小児科医会からの提案

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 政府は新型コロナウイルス感染症罹患児・者の全数把握を、令和4年9月26日より全国一斉に見直し、届け出対象者を
①65歳以上の高齢者
②入院を要する者
③重症化リスクがあり、新型コロナウイルス治療薬の投与や新たに酸素投与が必要な者
④妊婦
に限定し、運用が開始されましたが、本文には具体的な小児に関する記載は存在しません。
一方、本感染症の小児に関する知見の多くは海外のデータに基づくものであり、我が国でもオミクロン株の流行以降報告数が急激に増えている小児例においては、未だに小児の致死率、重症化率、ワクチンの効果を判定するに至るまでのデータは乏しく、現在その調査等が進められている段階であると思われます。
このような状況において小児の発生届に関して全数把握を見直すこと自体に時期尚早との意見も少なからず存在します。この現状を踏まえて日本小児科医会としては今後の届け出に関して以下の指針を追加することを提案致します。
①致死率、重症化率、ワクチンの効果等の詳細が公表されるまでは小児の感染例に関しては0~12歳(小学生相当)迄の全数把握を継続することが望ましい。(下図参照)
 全数把握が困難な場合においても、国内外の知見において2歳未満の小児及び基礎疾患等を有する小児等では重症化リスクがあることが報告されていることから、以下については「入院の必要が生じる可能性がある」ものと判断し、発生届提出の必要があることを周知すべきと考えます。
①2歳未満の乳幼児全例
②診断時点で直ちに入院が必要でない場合であっても、基礎疾患や既往歴等により、入院の必要が生じる可能性があると医師が判断した場合(熱性けいれん、クループ症候群、脱水、気管支喘息、ケトン性低血糖の既往例等)
③その他、高度肥満児・早産児・医療的ケア児・療育施設入所児・摂食障害児等

以上提案いたします。
                                    

 下記の図はオミクロン株流行後の小児の陽性者と死亡数の累積と重症者の週別発生数。昨年までは10歳未満の小児死亡例は0でしたが、すでに18名の死亡例が報告されています(2022年9月6日時点。全数把握の陽性者数の変化から、小児の感染拡大が起こると重症者、死亡数が増えることがわかります。全数報告がなくなると今後感染拡大の恐れがある小児に対し、致死率、重症化率の解析、流行の予測などの対応が不十分になると考えられます。
厚労省発表の資料から作図 https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html
(累積死亡数が減る箇所は、データに忠実に表記したためです)




令和4年9月27日
公益社団法人 日本小児科医会
会  長   伊藤 隆一
業務執行理事 峯  眞人