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2022/11/08

小児におけるインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に備えて ~医療機関の皆様へ~

ブログ

2022 年 11 月 2 日
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
日本小児科医会公衆衛生委員会

はじめに

2022/23 シーズンは、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)が同時に流行し外来医療の逼迫が懸念されています 1)。そのような事態を想定して、一部の医療機関に負担が集中しないよう、受け入れ態勢を広く構築することが重要で、各医療機関において小児発熱患者への対応をあらかじめ検討しておくことが大切です。

ワクチン接種の推奨

日本小児科学会、日本小児科医会は共に小児に対するインフルエンザワクチン接種および 5~17 歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨しています 2)~5)

インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同時接種も含めた接種間隔の制約がなくなりました6)。なお、新型コロナワクチンの前後にインフルエンザ以外の予防接種を行う場合は、原則として新型コロナワクチン接種と 13 日以上の間隔を空けることになっています 6)。接種にあたっての具体的な注意などについては厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html)や日本小児科学会(http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=379)、日本小児科医会(https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a299)のそれぞれのホームページなどを参考とし、ワクチン接種の計画を保護者とともに積極的に立てることが望まれます。

かかりつけ医としての小児発熱患者の診療

2022/23 シーズンの発熱患者は、年齢やワクチン接種歴にかかわらず、インフルエンザと COVID-19 の鑑別が重要となります 7)。また両者の同時感染も考えられます。かかりつけ医などは、地域の流行状況を踏まえて、PCR や抗原検査などの診断に必要な各種検査を適切に行い、両者を鑑別しながら診療する必要があります。

検査適応や注意深い経過観察、入院適応を適切に判断できるように、基礎疾患の有無、患児の体質、既往歴、予防接種歴などの患者情報をあらかじめ把握しておくことが重要です。そのためには、これらの多くを既に把握しているかかりつけ医による診療が重要になります。
医療機関では、発熱を主訴とした小児が直接発熱外来や救急外来を受診する前に、かかりつけ医に相談・受診できる体制の整備やかかりつけ医自身の事前の準備も必要です。

オンライン診療の適切な活用

インフルエンザと COVID-19 が同時流行した際に、小児医療の逼迫を避けるために、重症化リスクの低い軽症者など、一定の条件を満たせば電話診療を含めたオンライン診療も考慮されます。ただし、急性疾患罹患時やオンライン診療後に症状の悪化が生じた際は速やかにかかりつけ医による対面診療を実施するなど 8)、適切に対面とオンラインを組み合わせて診療を行ってください

最後に

2022/23 シーズンに予想されるインフルエンザと COVID-19 の同時流行による混乱と一部の医療機関への負担集中、医療逼迫を回避するためにも、病院・診療所の区別なく、かかりつけ医として発熱患児への適切な対応が必要です。

さらに両感染症の発生数と重症化を減らすために、インフルエンザワクチン・新型コロナワクチン接種もお勧めください。

文献

  1. インフルエンザとの同時流行を想定した第8波対策の課題についての記述疫学的検討.第 99 回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード.2022 年 9 月 14 日
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000990103.pdf
  2. 2022/23 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会.2022 年 9 月 19 日
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20220926-1flu.pdf
  3. 5~17 歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 2022 年 9 月 19 日(改訂)
    http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=451
  4. 子どもの新型コロナワクチン接種を奨める医療関係者の皆様へ 日本小児科医会 2022 年 6 月 22 日
    https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a287
  5. 2022 年冬のインフルエンザ、新型コロナの同時流行へのワクチン対策 日本小児科医会 2022 年 10 月3 日
    https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a299
  6. 5~11 歳の子どもへの接種(小児接種)についてのお知らせ. 厚生労働省ホームページ. 2022 年 9月 29 日閲覧
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html
  7. 一般社団法人日本感染症学会 提言 2022-2023 年シーズンのインフルエンザ対策について(医療機関の方々へ). 日本感染症学会. 2022 年 7 月 26 日
    https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=47
  8. 小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症 2019(COVID-19)診療指針 第 2 版. 小児 COVID-19合同学会ワーキンググループ(日本小児科学会・ 日本小児感染症学会・日本外来小児科学会). 2021年 9 月 29 日
    http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/COVID-19_sisin_2_20210929.pdf

参考記事

生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会)